あきののろるにっき

League of Legends(LoL)に関するさまざまなことを記事にしていきます。 twitterは@AkinoAmaki_LoL

【あきののろるにっき#40】シーズン 2021 オープニングデー ざっくりまとめ

こんにちは、あきのです。

本日の記事では、昨日公開されたシーズン2021 オープニングデーライブストリーミングの内容を取り急ぎまとめました。

 

なお、ここに書いてある内容は動画の半分のみです。ワイルドリフト・レジェンドオブルーンテラ・チームファイト タクティクスに関する情報は(私の記事を見てくださっている層を考えて)省いていますので、興味のある方は是非公式の動画を参照ください。(というか、みんな動画見てください。本当に良い動画だから!)

 

さて改めて、この記事は大きく分けて「ユニバース(設定)」「リーグオブレジェンド」「esports」の3つのテーマを取り上げました。

それぞれについて、2021年にどのような動きがあるのかを概観する資料としていただければ幸いです。

 

 

 

 

ユニバース(設定)

シャドウアイルの侵攻

滅びの王、ヴィエゴ

シャドウアイルがルーンテラ世界への侵攻を始めました。

これまでは敵対していたデマーシア、ノクサス、アイオニアといった各国(主にノクサスのせいな気もしますが……)ですが、単体ではこのヴィエゴの復活には対抗できないと気づいた彼らは、手を取り合い、この世界の危機へと立ち向かいます。

このストーリーはここで終わりではありません。今年のLoLの中で、更に続いていきます。

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シーズン 2021 オープニングデー │ ライブストリーミング(https://www.youtube.com/watch?v=rnFRcjzhTzE)より。以下全て同様

 

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リーグオブレジェンド

プレシーズンまとめ

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アイテム周りの一新

全てのアイテムに役割を持たせることを目標とし、各アイテムに様々な個性を持たせた。

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ショップ周りの一新

上級プレイヤーや相手チームの構成を参考にしたおすすめアイテムの提案を実装。

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今後の方針

数か月かけてバランスを注意深くチェックし、修正を行っていく予定。

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ランク戦

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ディビジョン内の昇格戦の廃止

ディビジョン内の昇格戦を廃止。

同時に降格猶予も原則として無くなるが、昇格シリーズを勝ち抜いて新しいティアにたどり着いた場合のみ若干の猶予が生まれる。

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プレイスメント終了後のランク

従来は前シーズンの最終ランクよりかなり低いディビジョンに位置付けられていたが、今年はより前シーズンの最終ランクに近いところから始まることに。

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ランク戦開始直後からのマスターから上のティアの開放

前シーズンまでは一定期間中マスターから上のティアへの昇格が制限されていたが、今年からは廃止。

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プレイヤー行動

AFKや意図的な利敵行為の検出精度向上に伴い、AFKの頻度は減少。

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味方によるAFK時の補償

ランク戦で味方チームの誰かがAFKした場合、AFKした本人はLPを大きく喪失し、

それ以外の味方プレイヤーのLP減少量が小さくなる。

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 CLASH

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全てのプレイヤーが遊べるように

今年はCLASHを遊びたい全てのプレイヤーが参加できるようにすることを目標の一つとする。たとえばフリーエージェントシステムを改良し、1人からでもCLASHに参加できるようにしたり、CLASHトーナメントの時間別開催をテストし、従来は休日に開催されていたCLASHに参加できなかった人へ配慮すること等を検討中。

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レベルシステム

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レベルシステムの統合

ランク、名誉、サモナーレベル、チャンピオンマスタリー等のレベルシステムを有意義に統合する。

また、プレイヤーのプレイスタイルや成果を他のプレイヤーに見せることのできるシステムを開発中。

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 チャンピオン

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チャンピオンリリース

昨年に引き続き、一年間のうちに必ず全レーンのチャンピオンをリリースする。その第一弾、滅びの王であるヴィエゴがJGとして登場。まもなくPBE環境に、そして1月下旬には正式リリースとなる。

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ヴィエゴに続きリリースされる3体のチャンピオン

これら3体のチャンピオンはヴィエゴの復活に関わってくる。彼らは魔法ダメージを出せるTopレーンファイター、陰気なメイジ(ヨードル)、単なるADCではないマークスマン(セナと関連)。

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チャンピオンアップデート

ドクター・ムンドのアップデートを今春に予定。彼の「ダークコメディ」感を前面に押し出す。

 

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加えて、次なるアップデート対象の投票を行う。候補はシヴァーナ、ノクターン、ウディア、クイン、スカーナー。事前に変更の方向性を公開し、投票を募る。

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 スキン

年間のスキンリリース数

2020年はリリースするスキンの数を増やし、140以上とする。特に近年新スキンが登場していないチャンピオンたちにスキンを用意する。

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テーマ

「テーマ疲れ」の回避

スキンシリーズ(スターガーディアンやK/DA、バトルアカデミアなど)にマッチしたチャンピオンが徐々に減ってくることに伴い、プレイヤーのスキンに対する満足度が下がっていってしまう。この事態を防ぐため、人気の高いテーマのリリースは継続しつつ、新たな世界観の開拓を目指す。

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月の聖獣イベントスキンシリーズ

2057年の丑年を時代感として設定し、伝統的なデザインを取り入れた最先端のストリートファッションを表現するスキンシリーズをリリースする。対象チャンプはフィオラ、ジャーヴァンⅣ、アリスター

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Space Groove(仮称)スキンシリーズ

サイケデリックなスペースレトロフューチャーファッションをテーマとしたスキンシリーズ。

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スキンシリーズのテーマ投票

「モンスターテイマー」「クライムシティナイトメア」「おしゃれ2.0」シリーズでプレイヤーによる投票を行い、最も人気の高かったテーマを今年中にリリースする。

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イベント

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イベント関連ゲームモードのリリース

チャンピオンの「もし」を実現することを目標に、新たなゲームモードのリリースを行っていく。

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イベントパスのシステムの改良

内容の分かりやすさ、操作のしやすさを改良していく。

ルーンテラの物語の拡張

LoLの「精霊の花祭り」イベントの最後にヤスオとアーリがビルジウォーターへと旅立ち、それが新たなゲームである「Ruined King: A League of Legends Story」へと繋がった。そして今回発表されたヴィエゴの復活で再びLoLへストーリーが帰ってくる。このように、ルーンテラの物語をゲーム間でもクロスさせる。

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esports

LoL競技シーンの開幕

1月9日のLPL(中国地域)の開催を皮切りに、世界各地でプロシーンの火ぶたが切って落とされる。

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競技シーンの拡大

今年からワイルドリフトの競技シーンが開幕する。
加えて、既にesportsとして展開されているチームファイト タクティクスについても、各セットごとの世界大会開催に留まらず地域ごとの予選イベントや賞品を拡充。
更に、レジェンドオブルーンテラについても地域イベントを拡大していく。

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LoL 地域ロゴ

一部地域のロゴについて、リニューアルを施す。

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2021 World Championship

2020年に引き続き、今年のWorldsも再び中国で開催。昨年は新型コロナウイルスの影響によりバーチャル開催に力点を置いたが、今年は多くの都市で開催できるよう準備を進めている。決勝戦深センで行われる。

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(文:あきのあまき)

【あきののろるにっき#39】Riot初の短編小説が1.5倍楽しく読める!予習しておくととっても幸せになれる10の単語

こんにちは、あきのです。

今回は、Riotから発表されたLoL初の短編小説「ガレン:一番盾」が1.5倍楽しく読めるようになるための記事を書きました。

universe.leagueoflegends.com

 

1.記事を書くことにしたきっかけ

実は今回、幸運にも先行レビュワーの一人として、皆さんに先んじてこの短編小説を読ませてもらいました。(多分もう一生こんな幸運訪れないと思います……!)

内容にめちゃくちゃ興奮しながらサイオンのUlt並のスピード(MS950固定)で読んだんですが……読み進めていくうちに感じたことは、「これ、ユニバース(LoLの世界観)の細かい知識なしで読むのはあまりにもったいないな」ということでした。

というのも、ページのそこかしこに「知っていれば嬉しくなる、ちょっとしたワード」がちりばめられているんですよ。

例えばドーントレス前衛隊。

単なるデマーシア軍の一部隊というわけではなく、軍の中でも精鋭中の精鋭が集められた選りすぐりの一団で、しかも隊長がガレンということを知っていれば、この単語を見たときの印象も大いに変わってくるでしょう。(ちなみに、そんなエリート部隊への入隊可能性が見いだされたポロがいるって知ってました?)

 

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全身をルーン鋼に包んだデマーシア兵の雄姿(Riot公式より。以下同様 Link

例えばハイ・シルバーミア。

事前知識が無ければ「デマーシアのどこかの都市」で通り過ぎてしまうこの単語も、「ガレンとラックスの兄妹が幼少期を過ごした場所で、銀の翼をもつラプターで有名な高地」であることを知っていれば、おのずとその情景が浮かんでくるでしょう。

 

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ハイ・シルバーミアの情景。遥か高地に豊富な水をたたえている。

 

 


そんなわけでこの記事には、小説を読むうえで、「知っていると楽しめる」言葉の解説を頼まれてもいないのに勝手に記事を書いて詰め込みました。

是非、本編を読む前にこの記事を読んでいただければと思います。

 

 

2.あらすじ(物語の導入部分)

時系列はコミック:ラックスの少し後。

自らが付き従っていながら国王ジャーヴァンⅢ世(ジャーヴァンⅣ世の父)を殺害されてしまったガレン。苛烈なメイジ狩りからメイジたちを助け出し、共に旅することを決めたラックスを見送った彼は、後悔と共に眠れない日々を過ごしていました。

そんなある日、叔母であり、またデマーシア大元帥でもあるティアナ・クラウンガードに呼び出された彼は命令を受けます。

「デマーシアの東にある同盟国、ノックマーチに派遣した大使から手紙が届いたが、精巧に書かれた偽造文書だった。あの国はおそらく何かを隠している。ノックマーチの現状と大使の身の安全を確かめよ」

国王を弑されるという最悪の失態を犯し、しかも一番の親友であるジャーヴァンⅣ世も冷静さを失ってサイラスを追いかけている状況下、とてもデマーシアから離れる気にはなれないガレンでしたが、謹厳実直を体現する男としては、同意はできずとも命令を受け入れます。

急ぎ彼は船を準備し、川を遡上してノックマーチへと向かいます。ドーントレス前衛隊の中でも最古参級のメレック軍曹や、未曽有の好成績で入隊を果たし、自身も目をかけていた娘、クラウドフィールドのシスリアといった最精鋭の兵士たちを連れて。

 

3.予習しておくと幸せになれる単語集:人物

(1)ドーントレス前衛隊

彼らはマーシア建国初期から存在する軍団で、国が誇る最精鋭部隊です。

隊員の一人一人が地元の英雄であり、例えば「僅かな味方を率いてノクサスの精鋭部隊であるトリファリアン・レギオンの軍団を丸一日相手にした剣士」や「百年に一度目覚めて暴食するという恐るべきディープワームの討伐者」、「フレヨルドの港湾都市フロストヘルドを焼き尽くした男」などなど、個人単位でもその武勇伝には枚挙にいとまがありません。

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「デマーシア最強を誇る精鋭部隊、ドーントレス前衛隊はその一人ひとりが故郷の村や地方で武勇を語り継がれる勇士だ。それでもその名声に胡座をかく者はいない。彼らの目標は、王国全土にその名を轟かせることなのだから。」 LoRのフレーバーテキストより

 

そして、それらの全員を束ねる指揮官こそが「デマーシアの勇士」ガレンです。

彼を見ればわかるようにデマーシアは規範を重んじる国であり、一般に武具もみな統一されたものを使用するのですが、ドーントレス前衛隊だけは、その戦闘能力を遺憾なく発揮できるよう、ある程度装備の自由が認められています。

しかしさすがは歴史ある部隊というべきか、その武具も古兵から新兵へと受け継がれる伝統があるのだとか。

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「ドーントレス前衛隊の装備は兵士から兵士へと受け継がれてゆく。新兵はその装備を手にすることで、自らが負った任の重さと栄誉とを体感するのだ。」 LoRのフレーバーテキストより

 

ちなみに、前述した通り、デマーシア軍に所属しているとあるポロもドーントレス前衛隊入りの可能性が噂されたことがあったり。

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「この新兵の持久力と勇敢さは、我が軍の精兵にも劣らん。なに?いつかは前衛隊入りできそうかって?他の者より多少小柄ではあるが…ないとは思わんな」 - 前衛隊の曹長 (LoRのフレーバーテキストより)

 

(2)クラウドフィールドのシスリア

彼女はデマーシアにおけるシンデレラガールです。シンデレラと言っても軍隊においての、ですが。

マーシアの中心部から離れた土地に生まれた娘である彼女は、読み聞かされるおとぎ話の影響で、子供の頃から祖国の英雄たちに憧れを抱いていました。

そうしてついにデマーシアの中心である大都デマーシアへと上洛した彼女は、軍への入隊を果たします。

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「母は毎晩寝る前に、剣を研ぎながらデマーシアの偉大な英雄たちのお話を語ってくれました。おかげで私は、冒険に満ちた夢を見ることができた。そして今日、私は自分の物語を紡ぎ始めるのです」 LoRのフレーバーテキストより

 

そして、軍へ入隊して一年。

経験を積み、隊の中では最年少ながら剣さばきの素早さで知られるようになった彼女は、ガレンの推薦を得てドーントレス前衛隊の入隊試験を受験します。

1か月にも及ぶ過酷な試験の末、彼女は歴代でも有数の好成績を残して合格。ついに英雄への入り口、前衛隊への入隊を果たしたのです。

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「新たな出会いがあるたびに、新たな旅に出るたびに、私は新たな学びを得た。けれど学ぶほど、強くなるほど、道はまだまだ長いことを実感させられるの」 - 前衛隊の従士 シスリア (LoRのフレーバーテキストより)

そしてその後、デマーシアの英雄へ上り詰めた彼女。

自分自身の冒険を求めて故郷を離れ、ついにはデマーシアの英雄の一人として名を連ねた彼女ですが、今もまだ世界にあふれる冒険を追いかけています。

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「伝説やおとぎ話を絵空事だと思ったことはない。それらはどれも、私を誘う冒険譚だった。私は自分自身の冒険を求めてクラウドフィールドを離れたけれど、探すまでもなく世界は冒険で溢れていた。そう、すべてはまだ、始まったばかり」 (LoRのフレーバーテキストより)

(3)大元帥 ティアナ・クラウンガード

よく「ガレンはデマーシアを体現した人物」と評されますが、「デマーシアの体現」という点においてティアナ・クラウンガードに勝る者はいないでしょう。

ガレンの叔母であり、デマーシアの国家とその理念を守る名門クラウンガード家の一員である彼女は、軍でも大元帥という地位に就いています。

その性格はまさに「厳格」。一切の妥協を許さず、また誰よりも己に厳しい彼女は、私情を一切挟むことなく祖国の発展に貢献します。

当然そんな彼女は、同じクラウンガード家であっても(むしろクラウンガード家だからこそ)ラックスが持つ魔法の力を一切認めることなく、現在に至っています。

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「王国のため、我が家門はその血を流してきた。些細な光の手品如きで、一族の名誉を汚すことは許しません」

「我らが掲げる旗、その重みをよく理解することだ。この旗は我らが仰ぐ王、連なる家門、守る民を象徴するもの。一片の揺らぎもなくデマーシアを信じる我らの心そのものなのだ。高く掲げ、我らの誇りを示しなさい」

 LoRのフレーバーテキストより

 

ちなみに彼女はガレンより前にドーントレス前衛隊を率いていたことがあり、タフな軍人としてもその名が知られています。

そんな彼女が前衛隊を率いての初陣は、ノクサス相手の要塞防衛戦。この戦いの中でノクサス軍を打ち倒し捕虜としたのが、後にシン・ジャオと呼ばれ、デマーシアの家令長まで務め上げる人物でした。

 

(4)ティアナの夫 エルドレッド

ティアナ・クラウンガードの夫である彼(但し、夫婦仲はフレヨルド並に冷え切っている様子)は、その歴史をデマーシア建国の頃まで遡る「メイジ狩り」の長です。

何者かに弑される前、ジャーヴァンⅢ世はそれまでの失政を悟り、メイジ狩りにメイジの逮捕停止を命じる計画をしていましたが、時すでに遅し。

エルドレッド卿がその命令を受ける前に国王は殺害され、その結果、彼が率いるメイジ狩りはその活動の過激さを増していくのでした。

現在のデマーシアでは、魔力を持つ市民は(無害かどうかにかかわらず)全員が裁きの場に出るよう法が改正されており、メイジ狩りはこの法令のために市民たちを狩り立てています。

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「遠い昔、ルーン戦争で用いられた始原の魔法はルーンテラ全土に滅びをもたらした。我々は王国を守るべく、その内外を問わずに魔法を排することを目的として設立された」 - メイジ狩りの手引書 (LoRのフレーバーテキストより)

 

(5)かつてのデマーシア国王 アルゴスタン

今回の短編小説で初めて名前が明かされた、現在から遡ること数世紀前のデマーシア国王です。

グリーンファング山脈(後述)の頂上にエバーピーク(ラプター騎兵たちが故郷とする山砦の中で最も重要と言われている山砦)を築いたこと等で知られる王様ですが、中でも彼のこの言葉は、簡素でありながら力強いものとしてガレンも借用しているようです。

 「ドーントレス前衛隊が立ち続ける限り、デマーシアは決して倒れぬ」

 

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この陣形は我々の戦術の基礎となるものだ。これを成立させるためには、各々の兵士が自らの盾に、そして戦友の盾に揺るぎなき信頼を置いていなくてはならない。彼らが立ち続ける限り、王国は決して滅ばん (LoRのフレーバーテキストより)

 

(6)デマーシア建国の祖 オーロン

はるかな大昔、デマーシア建国初期の人物で、元々はルーン戦争によって荒廃した世界で安住の地を探す流浪の部隊の隊長でした。

そんな彼が見つけた場所は、魔法を防ぐ効果を持った木の林立する地。そこを居住地と定め、まさに「何もない」ところからデマーシアという国の建国に大いに貢献した人物こそが彼です。

その人気は留まることを知らず、建国の祖である彼自身だけでなく、背負っていたハンマーすらも聖なる象徴として崇められるほど。(そのハンマーは現在、オーロンの友であったポッピーが使っています)

 

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「…勇者?いや、私はこのハンマーを預かっているだけの、ただのヨードルだ。」

 

更に、著名な武器鍛冶として名を馳せた彼は、ハンマーのほかにドレイクベインという銘の巨槍を鍛え上げました。

マーシア初期の入植者たちを苦しめた氷龍マエルストゥロムとその子孫を討つために鍛造されたこの槍、現在はジャーヴァンⅣ世が武器として携えていますが、その威容はデマーシアにそびえ立つ白い城壁や国王の冠と同じくらい偉大な国の象徴として崇められています。

 

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「統治者は言葉によって成るかもしれぬが、歴史は行いによってのみ成る」


4.予習しておくと幸せになれる単語集:モノ、場所、生き物

(1)ペトリサイト

この物質の発見はデマーシア建国初期まで遡ります。

魔法の力が暴走し世界中が荒廃しきっていたこの頃、破滅的な魔力から逃れてきた人々の一部は、なおも悪しきメイジの集団に追われていました。

気の休まることのない逃亡の日々に疲れ切った彼らは見たことのない「白い森」へと入り、はたと気が付きます。「この森の中では、魔法が無効化される!」

 

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魔法を吸収する力を持った木々が生い茂る、不思議な白い森

ライズ:力への呼び声より

魔法から護られたこの場所を安住の地と定めた彼らは、「魔法を無効化する木」の利用法を考えました。

当初こそ木で防具を造るだけに留まっていたものの、次第にその技術は高度化。そして「魔法を無効化する木」に灰と石灰を混ぜることで生み出したのが、強力な魔法耐性を持つ「ペトリサイト」と呼ばれる物質でした。

その影響力はすさまじく、新しい国の礎として防壁の材料にもなっています。

 

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王家の居城。素材となる木が白いため、ペトリサイトを用いた建材は白くなる。

 

(2)ブライト鋼

別名でデマーシア鋼やルーン鋼、シルバー鋼と呼ばれ、材料として使用しているペトリサイトの効果により、若干ですが魔法を防ぐ効果があります。

噂では、戦闘で魔法の攻撃を防ぐために、デマーシアの武器鍛冶たちは金属を聖水に浸して焼き入れするのだとか。

 

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「戦の勝敗は鍛冶場で決まる。」 LoRのフレーバーテキストより

 

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マーシア特有の鋼のおかげで、デマーシア軍は他国の魔法力に対抗することができる。

(3)グリーンファング山脈

マーシアとノクサスの国境にほど近い場所にある山脈で、両国を隔てる天然の要害の一つです。

また、マーシア軍に所属する「レンジャー騎士」たちが集う場所の一つでもあります。

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レンジャー騎士の一人、ジェネヴィーヴ・エルムハート

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レンジャー騎士にはたいてい相棒がいる。「デマーシアのレンジャーが戦う姿には、いつだって驚嘆させられる。分かちがたい絆で結ばれた人間と動物が並び立ち、熱い決意を胸に一心同体となって戦うのだ。」 LoRのフレーバーテキストより

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彼らレンジャー騎士の中には、銀翼のラプター(通称シルバーウィング)を駆って敵陣の偵察や攪乱を行う者も。

 

(4)ラプター

モナーズリフトでは可愛らしい生物(ジャングラーにはまた別の意見があるかもしれません)であるラプターも、ルーンテラの世界では非常に怖い存在です。

特にマーシアラプターは高地の険しい岩山に生息する貪欲な捕食獣ですが、上述の通り、レンジャー騎士たちの中にはその背に騎乗するものもいたりします。

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モナーズリフトとはイメージが違う、デマーシアラプター

 

5.おわりに

いかがだったでしょうか。

今回紹介した用語のように、小説の中ではちょっとだけ出てくる言葉であっても、その裏には豊富で壮大な物語が隠されていることを知っていただけたなら、これに勝る喜びはありません。

この記事を楽しんでいただけたなら、是非メインディッシュである短編小説もご覧ください。

universe.leagueoflegends.com

(文:あきのあまき)

 

【あきののろるにっき#38】ビクター応援プロジェクト ~無知蒙昧の輩に進歩を受け入れさせるには~

「進歩を受け入れよ」

ビクターのこの言葉は生物にとって非常に大切だ。

進歩(進化)の止まった生物はいずれ滅びるしかない。*1

しかし、ビクターの進め方は間違っている。進化生物学の観点から、ビクターが今なすべきことを説明する。

 

進歩と進化の違い。どちらがビクターの主張に近いか

私の手元にある辞書には、進歩と進化は以下の通り記載されている。

(1)進歩

物事が次第に発達すること。物事が次第によい方、また望ましい方に進み行くこと。

(2)進化

生物が世代を経るにつれて次第に変化し、元の種との差異を増大して多様な種を生じてゆくこと。

こう見ると、ビクターの主張する「人が肉の体を棄てて、より優れたヘクステックの身体拡張に置き換える」ことは、「進歩」よりもむしろ「進化」に近いニュアンスであるとわかるだろう。

実際、彼自身もこの事象を「グロリアス・エヴォリューション(輝かしい進化)」と呼んでいる。

 

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公式サイトより。以下同じ Link



ところで、通常の生物における進化とは、おおよそ

  1. 「幸運を引き伸ばす」ことで
  2. 「自然選択」を生き残る

ことを指している。*2

彼自身の思想を広めるためにも、まずは生物の「進化」のキーとなるこの2つの概念を理解していきたい。

 

企業戦士ムンドの過労死

ビクターの言う「進歩を受け入れよ」という言葉。冒頭にも述べた通りこの言葉は生物にとって非常に大切だ。

進歩(進化)無き生物は生き残れない。

しかし、「羽が無い生物が子供を産んだら、突然羽が生えていた」という事はありうるのだろうか?

正解は「ありえない」だ。このような事象が発生するには、天文学的な確率に更に天文学的な確率を重ね合わせたかのような可能性を引き当てなければならない。
どれほど難しいことかを、例を出して説明してみよう。

さて、ここに企業戦士ムンドを呼んでおいた。

 

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「ムンド営業回り!」や「ムンド名刺交換!」と発言するなど、社会人としての基礎が出来ているような素振りを見せる彼ならおそらくキーボードを叩くことなど造作もないだろう。

さて、そんな彼に「LEAGUE OF LEGENDS KIGYOU SENSI MUNDO」という31文字を打ってもらうことにする。但し、そこはやはりムンドだ。キーボードの細かい字など読めるわけがない。そこで彼にはこんなルールを課すことにした。*3

(1)10秒かけてキーボードを31回押し、31文字の文章を完成させる。(キーボードはアルファベット26文字分しか用意されていない)

(2)きちんと「LEAGUE OF LEGENDS KIGYOU SENSI MUNDO」という文章が書けていればその時点で退社してよい。

(3)文章が書けていなければ、再度10秒かけてキーボードを31回押し、31文字の文章を完成させる。

このルールであれば、突然生物に羽が生えてくる確率よりはムンドが文章を完成させる方が速そうだ。*4

さて、この企業戦士ムンドは一体どれだけの確率で文章を完成させ、退社を勝ち取ることができるのだろう?

 

 

答えは1/73,143,171,433,403,393,900,724,146,770,015,259,539,275,776だ。

仮に73,143,171,433,403,393,900,724,146,770,015,259,539,275,776回ムンドに頑張ってもらった場合(それでも36.8%の確率でまだ文章を完成させられていないというのはあまりに悲しい現実だ)、かかる時間は23澗1935溝4751穣1860ジョ5384垓0078京7717兆7733億4324万5668年。

参考までに、地球を含むこの世界(宇宙)の歴史はまだ約140億年だ。

彼がいつ文章を完成させられるかについて確たることは言えないが、これだけは断言できる。ムンドは過労死する。

 

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R.I.P. 企業戦士ムンド

 

さて、これで「突然羽が生えてくる」ということなどありえないということが分かってもらえただろうか。

しかし現実には羽の生えた種族が存在している(スウェインの周りを飛ぶカラス、ベアトリクスもその一種だ)。何故このような矛盾が生まれるのだろう?

その疑問を解くカギこそが「幸運の引き伸ばし」だ。

 

幸運の引き伸ばし:ムンド、労働基準監督署行く!

先程の例ではムンドがあまりに可哀想なので、ルールをほんの少しだけ変えてやることにした。新たなルールはこうだ。

(1)企業戦士ムンドを50人用意する。(!)

(2)50人がそれぞれに10秒かけてキーボードを31回押し、31文字の文章を完成させる。(ここは同じ)

(3)誰かがきちんと「LEAGUE OF LEGENDS KIGYOU SENSI MUNDO」という文章が書けていればその時点で退社する。(ここも同じ)

(4)誰も正しい文章が書けていなければ、「50人のうち最も答えに近い文章を作ったムンド」が残り49人のムンドにその内容を教え、全員にその情報を共有する。

(5)ムンドたち全員はもらった情報を再度10秒かけて打つ。が、残念ながらみんなちょっとイカれているので、ほんの少しだけ違う文章を作る。

(6)結果、50人ともダメなら、再び最も答えに近い文章を作ったムンドが全員にその文章を教え、50人が打つ。

 

これならどうだろう。

答えは「まともな時間に退社できる」だ。

そう、正しい文章はランダムにキーボードをたたいてもほぼ確実に完成しない。つまり一足飛びの進化は事実上不可能なのだ。

生物が進化するには、ランダムに打ったキーがたまたま答えと合致しているような「ちょっとした幸運」を積み重ねていくしかない。これこそが「幸運の引き伸ばし」だ。

 

しかし、ここで一つ疑問が出てくる。

ムンドたちが作った文章のどれが答えに近いのかを判定しているのは一体誰なのだろう?

モナー?Riot?それとも悠久の時を生きるバード?この答えは出そうにない。

しかし、一般的な進化の話なら回答できる。答えは「自然」だ。

 

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自然選択:ルーンテラが「進化」を選び取る

「自然」が選択するとはどういうことか?「自然」に意思があるということ?もちろんそうではない。(アイオニア人にはまた別の意見があるかもしれない。なにせ彼らは家を作る際、木にお願いして「曲がってもらう」のだから。)

ここで言いたいのは、「自然環境では、ほんの少しでも生き延びやすい能力を持った個体が生き残り、多くの子を残す」ということだ。

例えば鳥。クインの相棒ヴァロールのような大型の猛禽であれば話は別かもしれないが、基本的に鳥は弱肉強食世界のトップというわけではない。大抵自分を食べる「捕食者」が存在する。だからこそ彼らは空を飛ぶことで生存能力を高めている。

 

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ヴァロールは「アズライトイーグル」とよばれる猛禽の一種。クインとは固い絆で結ばれている。

 

だが、そんな彼らにも祖先を辿れば必ず翼の生えていない種族がいたはずだ。(「翼」は進化を経て手に入れたものだからだ)

その祖先たちはどうやって子孫を残し、後世に翼を授けたのだろう。

おそらくこういうストーリーだろう。祖先の中で一匹、ほんの少しだけ「手が大きい」個体が生まれた。彼は手が大きいからこそ「少しだけ滑空」できた。

少しだけ滑空できれば、それだけ捕食者に捉えられる可能性は減る。そうやって彼は種族の中でも長く生き残り、たくさんの子をなした。

その子供たちも同じく捕食者から逃れつつ子をなしていき、その過程の中でより「手の大きさ」が洗練され、「長く滑空できる(つまり、生存に有利)」となるような「手」を持つ個体が生まれてきた。

この「長く滑空できる」個体はより長生きし、更に子をなし……ついには「翼」を手に入れたというわけだ。

 

ここで意識しておきたいのは、一切、全く、誰もこの「選択」に関与していないということだ。

あくまで「生存のしやすさ」という一点でのみ有利な個体がその覇権を握る。その繰り返しが起きているだけである。

しかし、それが結果として「選択」と同一の結果を生んでいるのだ。

 

翻って、ビクターのプロジェクトを応援するためには

さて、ここで話を本題に戻そう。

古来より人間は、持ち前の武器である知性によって「炎」や「機械」、「電気」などの自己進化の代替物を外部化して生み出してきた。(もしかすると、何らかの理由で脳が発達しなかった人間たちは、知性がないため炎を外部化できず、全員がアニーのように炎を発する能力を手に入れていたかもしれない)

 

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しかし、ビクターの言う「進歩(進化)」はもっと直接的だ。彼の言葉を借りれば「人が肉の体を棄てて、より優れたヘクステックの身体拡張に置き換える」のだから。そのような直接的な進化は、もっとゆっくりじっくり進めていかなければならない。一足飛びの「進歩(進化)」は不可能なのだから。*5

つまり、彼の求める「進化」はあまりに性急なのだ。

 

そこで彼には「ルーンテラオリンピック」の開催を提案したい。

各国の代表者を集め、運動競技を繰り広げるのだ。そしてその中の短距離陸上競技部門で、彼の作った「ヘクステック義足」を装着した選手を優勝させる。そうすれば自然、ピルトーヴァー内の無知蒙昧な民衆たちはヘクステックでできた脚部パーツを賞賛する。そうすれば次は砲丸投げ部門で「ヘクステック腕」の登場だ。愚民たちは腕をも賞賛するだろう。そうなれば次は?マラソンでヘクステック心臓だ。

 

え、あまりにも迂遠だって?

仕方ない。進化とはかくもゆっくりとした「幸運の引き伸ばし」なのだから。

 

(文:あきのあまき)

 

 

参考文献

進化とは何か ドーキンス博士の特別講義(早川書房 (2014/12/25))

www.amazon.co.jp

*1:進化が止まるから滅びるのではない。進化する他の種に淘汰されて滅びるのだ。この言葉の意味は、この記事を読めばおそらく分かる。

*2:「不可能の山」等の他の概念も紹介したかったが、紙幅(?)の都合で割愛した。

*3:本当はSENSHI の方がヘボン式として正しいのだろうが、計算の都合上敢えてSENSIとしている。

*4:「世界に羽根のない生物は1匹だけではないので1人のムンドとは比べられない」という誤謬を見逃しているが、例えだということで勘弁してもらいたい。それに、生物が1兆匹いようが関係ないことはこの後を読めば分かるだろう

*5:「人という知性を持った種族が、進化のために自己の肉体を棄てられるか」という別の論点を考えるのも面白そうだが、趣旨から外れてしまうので別の機会としたい。

【あきののろるにっき#37】ノクサスを偉大な国にするために知っておきたいのは地政学

スウェイン元帥がどこぞの大統領よろしく「ノクサスを再び偉大な国に(Make Noxus Great Again.)」と言ったかは定かではない。

だが、ノクサスを世界最強の国家にしたいのであれば、今の外交政策は誤りだ。

地政学の観点から見た「本当に実施すべき外交政策」を書き記す。

 

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ノクサスの中枢 イモータル・バスティオンの威容(ユニバース公式より)

 

ノクサスの現状

LoLの世界観をあまり知らない人向けに、まずはノクサスの簡単な紹介を行おう。


【ノクサスのユニバースより】

「強大な帝国ノクサスは他国から恐怖の目で見られている。国境の外にいる者にとって帝国は残酷な拡張主義を掲げる脅威であるが、その軍国主義の内側を覗けば、武勇と才能に敬意を払い、それを育てようとする、類稀な開かれた社会を目にすることになる。

現在の帝国の首都である古代都市は、かつて残忍で野蛮な部族であったノクシー族によって占領されていた。四面楚歌にも等しいその状況で、彼らは積極的に外敵に戦いを挑むようになり、年々その領土を拡張してきた。この生存闘争が、ノクサス人を何よりも力を重んじる誇り高き民族へと変えた。ここでは様々な形で、力ある者が日の目を見ることができる。

社会的な地位や出自、出身、富などは関係なく、その適性を示すことさえできれば、誰であろうとノクサスの中で権力と人々の尊敬を手にすることができるのである。魔法を使いこなせる者は特に高く評価され、そうした人材の確保にも余念がない。帝国の繁栄のためにその特殊な才能を鍛え上げて利用するのだ。

しかし、このような実力主義的な理念とは裏腹に、古くから続く貴族たちもいまだに相当な権力を振るっている…ノクサスにとって最大の脅威は、国外ではなく国内から現れると恐れる者たちがいるのも事実である。

 

【探索&発見 ルーンテラより】


ノクサスは勢力圏拡大を是とする攻撃的な帝国で、国境を広げるべく常に新しい領土を虎視眈々と狙っている。だがいつも血が流されるとは限らない。事実、数多くの国家が帝国領となることで安定と安全を確保すべく、元帥の前に跪いてきた。だが一方で、ノクサスの支配を受け入れない者は、容赦なく叩き潰される。


ノクサスは領土を拡大して隣接する文化や都市を打ち負かすと、征服した人々に、ノクサスに忠誠を誓って己の実力のみで評価されることを受け入れるか、破滅させられるかの選択を与える。これはごまかしや計略ではない。ノクサス人は必ず約束を守り、征服者たちの生き方を受け入れた者の多くが、以前よりも豊かな生活を得られるようになる。しかし、跪くことを拒絶した者は、容赦なく叩き潰される。

 

つまり、まとめるとこうだ。

  • ノクサスは大昔から他国に戦いを挑むことで国力を蓄えてきた
  • 他国の文化を破壊し、ノクサス流に従わせる(※但し、一部では例外もある。気になる人はREALMS OF RUNETERRAのノクサスの項を参照)
  • そういった経緯から、実力主義を標榜している
  • 一方で、国内の貴族達も権威主義的な力を持っている

そんなノクサスは、ヴァロラン大陸の北東部に位置しており、加えて侵攻拠点・貿易都市としてアイオニアの一部とシュリーマの一部にもその手を伸ばしている

主な周辺諸国はアイオニア、デマーシア、フレヨルド、シュリーマ、ピルトーヴァー&ゾウンなどだ。

 

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赤い着色部がノクサスの領土(ユニバース公式より)


ノクサスは亡国に向かう

現在、主にノクサスの外交政策を決定しているのはスウェインである。彼は皇帝ボラム・ダークウィルから帝国を簒奪した後、国家の決定機関としてトリファリックスという三頭体制を敷いた。

彼がノクサスの強さの源だと考えている「予見」「力」「狡智」を体現する者を据えて国家を統治しているのだ。

その頭とは、それぞれ

予見:スウェイン

力 :ダリウス

狡智:不明(ルブランと言われているが、明かされていない)

であり、3名のうち2名が賛成した内容については例外なく国家方針として採用される。

そして、その結果として遥か過去から続くノクサスの拡張主義(=世界の征服を目指す)は今も継続されているのだ。

この拡張主義、これまでは国力に寄与したのだろう。しかしこのままではこの方針こそが国を亡ぼす。某格闘漫画では猛毒を受けた主人公に更に猛毒を浴びせ、「毒が裏返ったァッッ!」などと喜んでいたが、逆に過ぎたる薬が毒となることもあるのだ。


攻めすぎるノクサス

本当は1,000年ほど前から存在している国なので星の数の程侵攻の履歴があるのだが、ここは最近に絞ってどのような侵攻を行ったのか見てみよう。

 

(1)アイオニア

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薄青い着色部がアイオニアの領土(ユニバース公式より)


これが一番有名だろう。それまでは平和主義的な共同体であったアイオニアに軍事力を以て攻め入った。

これによりその運命が変わったチャンピオンも多い。

例えばカルマ。彼女は「アイオニアの魂」として平和的な存在であることを求められていたが、ノクサスの戦艦に向けて魔力を解き放ち打ち滅ぼしたことで僧侶たちの非難を浴びた。

例えばアカリ。ノクサスの侵攻に対し忍耐を求めるシェンに反発した彼女は「均衡の守人」を脱退し、身に着けた暗殺術でアイオニアを守ることを決心した。

スウェイン自身もそうだろう。それまでは誰もが羨む出世街道をひた走っていたかれも、アイオニア侵攻の際に「プラシディウムの戦い」でイレリアに敗北。左腕と膝を破壊され、軍をも追放された。(その数年後、ノクサス中枢に巣食う闇の力を手にしてクーデターを起こし、華麗な復活を遂げるのだが)

 

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スウェインとイレリアが戦いを繰り広げたナヴォリのプラシディウム(ユニバース公式より)

(2)デマーシア

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白い着色部がデマーシアの領土(ユニバース公式より)


ノクサスとデマーシア犬猿の仲であることは有名である。

ノクサスの拡張主義に対しデマーシアが応戦する形で繰り広げられるこの戦争は、サイオンがその死と引き換えにジャーヴァンⅣ世の曽祖父であるジャーヴァンⅠ世を殺害したり、度重なるメイジによる魔法攻撃がガリオを生み出すなど、様々なチャンピオンに影響を与えている。

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マーシアの武器。ルーン鋼と呼ばれる金属が使われており、ある程度魔法を防ぐ効果がある。(ユニバース公式より)



(3)シュリーマ

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黄色の着色部がシュリーマの領土(ユニバース公式より)

近年で最も成功したノクサスの侵攻はシュリーマだろう。

中央が砂漠地帯で、また女王レク=サイ*1率いるゼル=サイたちが跋扈するサイ・カリークも存在するここは、主に沿岸部と河川沿い*2が主要な都市となっている。

中でもノクサスは北シュリーマの各都市を服従させ、ノクサス軍の庇護を与える代わりに食料等の必需品を上納させている。

(4)フレヨルド

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青い着色部がフレヨルドの領土(ユニバース公式より)

意外と知られていない事実だが、ノクサスはフレヨルドにも侵攻している。

ダリウスは一度フレヨルドの部族に捕縛されたことがあるし、セジュアニが駆る猪のブリストルはもともとノクサスの食糧だったのを彼女を連れだしたものだ。

(5)ピルトーヴァー&ゾウン

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ピルトーヴァー&ゾウンの領土……というよりも、都市(ユニバース公式より)


抜け目ないノクサスは当然ピルトーヴァー&ゾウンも狙っている。現状、侵攻は行っていないものの、進歩の都市たるピルトーヴァーに偵察兵を送り込んで虎視眈々と侵攻の機会を狙っている。詳しく知りたい人は「進歩の日」を読もう。

 

 

さて、ここまで見てきたように、ノクサスは隣国を全面的に敵対視する外交方針を採用している。

しかしこの方針は非常に危険だ。負けるおそれがあるからではない。勝つおそれがあるからだ。

 

拡張主義国家の最期は大体同じ

現実世界に目を向けてみると、古今東西において拡張主義国家の末路は大体同じだ。すなわち、

  • 政治的混乱による内部分裂・反乱
  • 拡張により複数のイデオロギー少数民族等)を抱えることによる内部分裂・反乱
  • 拡張によりかかる国家維持コストに経済体制が追いつかないこと等による経済疲弊に伴う内部分裂・反乱

のいずれかによる弱体化である。

例えばサラセン帝国(高校を卒業した人なら懐かしいかもしれない)。この帝国は現在で言うところの西はモロッコから東はパキスタンまで支配した大帝国であったが、次第に地方が自立し始めて弱体化、最後はモンゴル帝国によってとどめを刺された。

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サラセン帝国の最大版図(link

ここでノクサスに目を向けてみよう。ノクサスに上記のような内部分裂・反乱のリスクはあるだろうか。

  • 政治的混乱:黒薔薇団の存在&そして貴族が権力を握っている
  • 複数のイデオロギー:多くの国・部族を属国としている
  • 国家維持コスト:侵攻失敗による軍費の増大

もしこれがビンゴなら、既に景品を手に入れているだろう。

 

ノクサスの内部は既に軋みを上げ始めている

ルブランが率いる黒薔薇団は政治的混乱の元凶として今も暗躍しているし、イデオロギーの面でもノクサスの統治法がマイナスに働いている。つまり、侵略の際に服従を示した小国は国家制度をそのまま残して属国化していることで、「ノクサス市民」よりも元々の国家(または部族)の民であるという帰属意識の方が強くなりやすいのだ。

また、侵攻失敗による軍費の増大も無視できない。通常、侵攻により発生する軍費は侵攻先の略奪や属国化による経済搾取等で賄うが、侵攻に失敗した場合はその補償が受けられない。ノクサスの場合、属国化した国々に侵攻を肩代わりさせている部分があるためすぐに中央政権が疲弊するということは考えにくいが、そのダメージと不満は着実に属国内に溜まっている。

近頃で言えば、実際にヴァルディスという地方がノクサスから離反した例もある(だが、スウェインによって復活したサイオンにより鎮圧された)。


地政学における「山」と「海」の役割

前置きが非常に長くなったが、ここでようやく地政学の話に移る。

地政学についての説明は、佐藤優『大国の掟 「歴史×地理」で解きほぐす』(2016年 NHK出版新書)が非常にわかりやすいため引用する。

地理を学ぶ意義は、まさに先述のとおり「長い時間が経っても変化しない」ということに尽きます。(中略)たかだか数百年で、日本列島がユーラシア大陸とつながったりはしないし、アメリカ大陸が分裂することもない。したがって地理的な環境は、国家にとって所与の条件として考慮されることになります。(中略)このような地理的思考を、国家戦略に活用したものが地政学と呼ばれるものです。

 

この地政学の文脈で、ロシアにおけるマルクス主義の父と呼ばれるゲオルギー・プレハーノフの有名な言葉として「海と川は人間を接近させるが、山脈は人間を分離させる」という言葉がある。

山脈が人間を分離させるというのは分かりやすいだろう。古来より、軍による山越えの困難さから山脈が事実上の国境となったケースは数多くある。

海が人間を接近させるというのは、国が海(つまり航路)によって繋がれることを意味している。ビルジウォーターは言うに及ばす、アイオニアやノクサス、シュリーマ等にも港町があることから、ルーンテラ世界においてもある程度海によるネットワークは機能しているだろう。よって、ノクサスは海によって世界のほとんどと繋がっていると言える。(不凍港があるか怪しいフレヨルドや、繋がっていても半分意味をなさないシャドウアイルは除く)

この場合、通常は「海からの侵略」を警戒する必要があるが、ノクサスは例外だろう。というのも、おそらく全国家で唯一軍艦を所持する等、海軍力においては他を凌いでいるからだ。(まぁその軍艦もカルマの魔法一発で破壊されてしまった事実がある以上、果たして圧倒的な差につながるかは疑問だが)

となれば、考えるべきは「山」だ。前述の通り「山」は国家と国家を分断するものだから、逆に「山」の無いところを考えれば良い。ここでルーンテラ世界の地図を見てみよう。すると、ほとんどの周囲を「山」か「海」で囲われているにもかかわらず、デマーシアとの間だけはほとんど遮るものが無いことに気づく。

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マーシアとの間にはほとんど「山」が無い


ノクサスは今後どう動くべきか:緩衝地帯という考え方

だからと言って「ではデマーシアを攻めよう」というのは危険な考えだ。安易な戦費の浪費は亡国に繋がりうるし、そもそもデマーシアには少数ながら精強な軍団が存在する。たとえデマーシアが肥沃な大地を擁する魅力的な侵略先だとしても、その天秤のもう片方には重大なリスクが載っていることを忘れてはならない。

ここでノクサスに導入したいのが「緩衝地帯」という考え方だ。緩衝地帯とは、現実世界においてはロシア等が積極的に考慮している概念で、「自国と敵対国の間に『自国ではないが、いつでも自国の軍が移動できる地帯』を作ることで安全保障を実現する」という考え方のこと。

何故この概念がロシアと親和的であるかというと、ロシアが平原の国だからだ。平原という事は「山」が無い、すなわちいつでも攻め込まれるリスクがあるということで、それを避けるためには周辺を親ロシア政権の国々で取り囲めばよいという理屈につながるというわけだ。(現実は、ソ連の崩壊と共にこの「緩衝地帯」となる親ロシア政権は次々と西欧に取り込まれ、かつてほどのものではなくなってしまった。それでもプーチン大統領は強くこの概念を推し進めている。昨今で言えば、2014年に起きたウクライナにおける紛争も「緩衝地帯」であるウクライナに親EU政権が樹立することを嫌ったという側面がある)

ここで再びルーンテラ世界の地図を眺めてみると、ノクサスの中心部は殆ど平原であることに気づく。つまり、ノクサスは「緩衝地帯」の概念と相性が良いのだ。

更に都合の良いことに、ノクサスは侵略した小国を服従化させる際、それまでの王族を領主として残すなど国としての体制をある程度残したままとしている(事実、アイアンスパイク山脈のデルバーホールドではヴァル=ロカン族が領主となり、ノクサスに良質な鉱石を上納している)。であれば、そのままその領地を再度国家として独立させればよいのだ。但し、親ノクサスの国としてだが。

この概念の導入によってノクサスが得られるメリットは「対外侵攻の停止による内政への注力」だ。上述の通り、拡張しすぎた国家は維持コストと内乱リスクの増大を招く。かれこれ1,000年もの間戦争し続けてきた国が今更という感もあるが、逆に言えば、従来は皇帝による独裁によってコントロールの利かなかった国家の膨張を、トリファリックスの三頭体制が実現した今こそ止めるチャンスとも言える。

 

終わりに

何度も繰り返した通り、ノクサスは膨張しすぎた。これまでは小国の併呑であったこともあり順調に進んできたのだろうが、ここからは精強無比のデマーシア、防衛本能に目覚めたアイオニア、皇帝の復活したシュリーマ、圧倒的な技術力と科学力を併せ持ったピルトーヴァー&ゾウンと強敵揃いである。これ以上の戦線拡大はノクサスを含めて誰の得にもならないだろう。

混乱を望むであろう「狡智」は頑として反対するかもしれないが、そこはトリファリックス。未来を「予見」するスウェインと、彼を理解し尊敬しているダリウスの2人が揃えば止められないものはない。ノクサスの未来を信じ、これまでの1,000年に終止符を打とう。

 

【参考文献】

佐藤優『大国の掟 「歴史×地理」で解きほぐす』(2016年 NHK出版新書)

www.amazon.co.jp

 

(文:あきのあまき)

*1:そう、レク=サイは女の子だ

*2:砂漠に河川とは不思議な話だが、皇帝アジールの復活と共に真水がとめどなくあふれ始めたのだ

【あきののろるにっき#36】ゲイルフォースの「余計なもの」と「足りないもの」

本日公開されたパッチノート10.23。その中でひときわ私の目を引いたのは「ゲイルフォース」だった。

このアイテムは明らかに未完成である。

余計なものがある。それは発動効果のブリンクだ。

そして足りていない。それは「このアイテムのバックストーリー」という部品だ。

そう思うに至った経緯と理由、そしてその解決案を書き記す。

 

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パッチノート10.23より

 

前置き

先に言っておくと、この記事ではパッチ10.23のゲームバランス調整については一切言及しない。

プレシーズンとはそもそもシーズン中には行えないような大規模な変更を行い、その影響をじっくりと見るものなのだから、現時点でのゲームバランスやアイテムパワーを見て「Riotはゲームバランス調整がヘタ」というのは筋違いだ。それに、昨今のRiotの調整に哲学が感じられないのは既に周知の事実だ。

また、この記事は、LoLというゲームを「様々な背景を持ったチャンピオンたちが戦うゲーム」という認識を持たない人には共感されないだろう。

この記事で言及するのは、LoLというゲームの根底にある「主役」のチャンピオンと「脇役」であるアイテムの関係性の話だ。この観点を具体化し、ゲイルフォースというアイテムに付いている「余計なもの」と「足りないもの」の話をしている。

そしてそれらを「余計なもの」「足りないもの」でなくするためにはどうすればよいかを考察する。

 

チャンピオンは3つの要素で差別化されている

私は「チャンピオンの差別化」という観点において、チャンピオンという存在が大まかに以下の3つの要素でできていると考えている。

それは「基礎ステータス」「チャンピオンのバックグラウンド」「そのチャンピオンらしさを構成するゲーム内要素」の3つだ。

このうち、基礎ステータス(HP、マナ、攻撃力、魔力……)については言及すべき要素が小さい。一部の例外(マナを持たなかったり、代わりに「気」を持っていたり)を除けば全チャンピオンに共通する要素で、役割(ファイターやメイジ、ADCなど)の中で細かな差別化要因になりにくいためだ。

チャンピオンのバックグラウンド(背景ストーリーや見た目などの設定)についてはチャンピオンの差別化要因として重要だが、ゲーム内の事柄をメインに話すこの記事においては敢えて記載を省きたい。

本記事のメインは3つ目の「そのチャンピオンらしさを構成するゲーム内要素」だ。これについては、大きく分けて以下の2つに分けられる。

(1)固有の「強み」による「そのチャンピオンらしさ」

これは分かりやすいだろう。

シェンは「均衡の守人」の長として、物質世界と霊的領域を行き来する。だから彼は世界を渡り、味方の元へ瞬間移動することができる。

ラカンはロトラン部族きってのバトルダンサーで、彼のダンスに心を奪われない者はいない。だから彼はアルティメットスキルで走り周り、触れたもの全てをチャーム状態にする。

ニーコはカメレオンのヴァスタヤだ。だから彼女はパッシブスキルで味方の誰にでも変身することができる。

これらはそれぞれチャンピオン固有の「強み」だ。この「強み」こそが、彼らを彼らたらしめている。

(2)固有の「弱み」による「そのチャンピオンらしさ」

キャラクターというのはその「強み」だけでアイデンティティを主張するのではない。固有の「強み」を得た代わりに付加された弱点も、そのチャンピオンらしさである。

ジンクスはそのクレイジーな性格通り、一度キルを得られれば爆発的な移動スピードで走り出し次々に獲物を食らっていく。しかし最初の1キルを得られずテンションがダダ下がった彼女は、ブリンクを持たないただのおさげ髪だ。

アカリは主なき暗殺者だ。近づいては離れ、煙幕の中に忍び、スキルと通常攻撃で敵に死をもたらす彼女も、煙幕の外で一度捕まってしまえば脆くも倒れ伏す。

ノーチラスは不沈艦の如き耐久力とシールド、そして豊富なCCを持つ。だが、彼だけではどう頑張ってもダメージ不足だ。

 

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キルの取れなかったジンクスはただのおさげ

 

オッドアイの悲劇

ところで、過去に読んだとある本に「ライトノベル小説において、単なるオッドアイのキャラは許されない」とあった。これは、大意において「キャラクターに特徴を持たせる場合はその理由も備えていなければならない」ということだ。

オッドアイなら右目からビームが出るのかもしれないし、左目が義眼でその中にICチップが隠されているのかもしれない。必ず何かしらの理由は備えようということなのだが、この点においてLoLはとてもよく出来ている。

アーゴットが人間なのに6本足なのは力を求めて自ら改造したからであるし、オレリオン・ソルの周りを星が周回しているのは彼自身が全ての星を創り出した存在だからだ。

単なる石像であったはずのガリオが意思を持ったのはペトリサイト製の身体におびただしい量の魔法を浴びたからであるし、スウェインの左手が紅いのはイレリアに斬り落とされた後に闇の力で復活させたからだ。皆にちゃんとストーリーがある。

翻って、アイテムには?

イオニアブーツにアイオニアの風を感じ、(新たに追加された)ターボケミタンクにいかがわしく危険なゾウンの「白い靄」を思い浮かべるかもしれない。しかし、そこ止まりだ。一部の例外を除き、アイテムにストーリーらしいストーリーは用意されていないのだ。

 

LoLのメインディッシュはチャンピオンである

それも当然だ。LoLのメインはあくまでチャンピオンなのだから。このゲームはチャンピオンの「らしさ」があってこそなのだ。

Riotも当然それを認識していて、チャンピオンに「強み」と「弱み」を持たせることを昨年から目標にしている。

jp.leagueoflegends.com

 


アイテムがチャンピオンの強みを伸ばすのは「そのチャンピオンらしさ」の強調としてとても良いことだ。弱みを補うのも良いだろう。しかし、弱みを「無効化」することがあってはならない。それは、ストーリーを持たない脇役であるアイテムが、メインディッシュであるチャンピオンの「らしさ」の一部を消し去ることに等しいのだから。

 

ゲイルフォースに付いている「余計なもの」

ここでゲイルフォースのアイテム説明を見てみよう。

「ゲイルフォース」をマークスマンチャンピオンに持たせれば、強力なスキルショットを避けたり、体力が低下した対象に強烈なトドメの一撃を喰らわせることができます。

基本ステータス
トータルコスト 3400ゴールド
ビルドパス ヌーンクィヴァー + アジリティ クローク + ピッケル + 625ゴールド
攻撃力 55
攻撃速度 20%
クリティカル率 20%
効果
クラウドバースト(発動効果) 指定方向にダッシュして、目標地点の近くにいる最も体力の低い敵に3発の飛翔物を発射する(チャンピオン優先)。180~315(チャンピオンレベル10~18)(+増加攻撃力の45%)の魔法ダメージを与える。体力が低下した対象には、最大50%までダメージが増加する(クールダウン90秒)
ミシック 他のすべてのレジェンダリーアイテムに移動速度3%を付与する

 

マークスマンの中には「ブリンクを持たない」ことが明確な「弱み」となっているチャンピオン達がいる。例えば前述したジンクスだ。ヴァルスも良い例だろう。彼はウェーブクリア・エンゲージ・DPSと豊富な強みを持つが、ただ一つ、ブリンクを持たないという「弱み」を持っている。ブリンクの有無というのは、それだけマークスマンにとって重要な特徴なのだ。

それを、ストーリーを持たない存在であるアイテムがたった一つで解消させる?これは明確な弱みの「無効化」であって、マークスマン向けのアイテムとして不適切だ。*1

 

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パッチノート10.23より

解決策の提案

ではどうすれば、ゲイルフォースのブリンクという「余計なもの」を余計なものでなくせるのか。

完全な解決策にはドクター・ムンドがやるような外科的手法(婉曲表現)が手っ取り早いが、それはあまりにもったいないし、アイテム自体に罪があるわけではない。

問題の根幹を「アイテムのストーリー性が薄いこと」、つまりアイテムがあまりに「脇役」であることだと捉えれば、話はシンプル。アイテムに今より少しだけスポットライトを浴びせればよいのだ。

例えばアイテムにストーリーを持たせることである程度解決を図ることができるかもしれない。

ゲイルフォースに「エズリアルがシュリーマの宝物庫から見つけ出した、古代シュリーマにおける伝説的な戦女王セタカの残した装具」というストーリーがあればどうか。このストーリーの詳細版をエズリアルのユニバースに載せるのだ。

そうすれば、ジンクスがサモナーズリフトで突然相手に向かってブリンクしたとしても「単なるアイテムによるブリンク」ではなく「古代シュリーマから甦った幻の装具のパワーによるブリンク」となる。単なるオッドアイではなく、右目からビームが出るようにするのだ。

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幸い、既に目からビームを出す先輩がいる

 

終わりに

アイテムによるチャンピオンの弱みの「補填」と「無効化」の境界はどこにあるのか?

この境界は主観的であるがゆえ曖昧で、人によって異なる。しかし、私はゲイルフォースのブリンクは明らかにやりすぎだと思った。(但し、他のアイテムについては「強み」を伸ばす方向のものが多いと認識していることは付記しておく)

こればかりは運を天に(拳に?)任せるしかないが、私の主観とRiotの感覚のズレが今後これ以上広がらないことを祈りつつ、今回はここで筆を置く。


(文:あきのあまき)

*1:じゃあサッシュは?CCに一度捕まれば終わりというADCの「弱み」を無効化するだろうという議論が出てきそうだ。その点は「ストーリー以外の観点におけるアイテムの個性」という別の論点になるので、ここは敢えて触れずにおく。

【あきののろるにっき#35】明日から開催、ノックアウトステージ! 準々決勝の勝利チーム予想はこちら。

こんにちは、あきのです。

いよいよ明日からノックアウトステージが始まりますね。

長きにわたって開催されるWCSももう折り返し地点を過ぎ、いよいよ「今年最強のチーム」を決める時が迫ってきています。

そんなわけで、今回の記事では、明日から始まる準々決勝の4戦について、様々な見解を踏まえつつ私なりに予想した結果を書きました。

 

 


1.ノックアウトステージの概観

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さて、今年のノックアウトステージには、

  • LPL(中国)が3チーム(WCS出場は4チーム)
  • LCK(韓国)が3チーム(WCS出場は3チーム)
  • LEC(ヨーロッパ)が2チーム(WCS出場は4チーム)

が出場。

ここで、直近5年のノックアウトステージ出場国を見てみると

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という形で、2年連続でノックアウトステージの椅子をLPL、LCK、LECの3リージョンが分け合う形となっており、3リージョンが前評判通りの結果を残したといって良い。

一方で懸念の残る結果となったのがLCS(北米)。

Team LiquidとFlyQuestがグループステージで3勝3敗と意地を見せたものの、期待されたLCS1位シードのTSMは0勝6敗で敗退。

いくらTSMが「死のグループ」に放り込まれたとはいえ、1勝もできず北米の地へ帰るというのは、昨年・今年のノックアウトステージ出場チーム数ゼロという不名誉な記録も相まって「LCSの凋落」という現実を強く印象付ける結果となった。

 

さて、それではここから準々決勝の対戦を1つずつ見ていき、勝利者を予想していこう。

 

2.Top Esports vs Fnatic

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この対戦については、あまり悩むことなくTop Esportsに軍配を上げたい。

単純にTop Esportsの実力が圧倒的に高いというのもあるが、中でもチーム全体での「デッドラインの見極め精度」については世界一と言って差し支えなく、この精度の高さから来るベイト力に対抗できるチームは現状DAMWON Gamingしかいないと思われる。

ここで、彼らのベイト力を示すシーンを3つ見繕ったので、是非視聴してほしい。

 

 

加えて、なによりもADCを務めるJackeyLove選手の調子が良い。

レーン戦における強さ、集団戦でのダメージ量、そして相手に集団戦を「仕掛けさせる」ベイト力のどれを取っても、今のJackeyLove選手に対抗できる相手はほとんど存在しないと言っていいだろう。

勿論、強豪ひしめくグループCという「死のグループ」を上がってきたFnaticの実力は疑いようもなく、実際にGen.Gに一度土を付けている実績もあるが、一方でLPL4位のLGD Gamingに敗北を喫する等、やや不安定な面も見せた。(一方のTop EsportsもLCS2位のFlyQuestに一発入れられているが、これはかなり挑戦的・実験的なピックをした結果であり、敗北の質がFnaticのそれと異なるためあまり気にしていない)

そんなFnaticにとって突破口があるとすれば、それはチーム・選手の「世界大会経験回数の差」だろう。

Top Esportsのスターター選手のうち、Top 369選手、Mid knight選手、Sup yuyanjia選手の3名はWCS及びMSI(Mid-Season Cup 2020を除く)への出場経験が無い。(JG Karsa選手は8回、JackeyLove選手は3回の出場経験あり)

一方のFnaticで出場経験が無いのはJG Selfmadeのみであり、世界大会特有の雰囲気に呑まれにくいというのはプラス要因になるだろう。

 

3.Suning vs JD Gaming

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この対戦ではJD Gamingを推したい。

SuningとJD Gamingは今年のLPL Summerプレイオフで対戦しておらず、直近での直接的な実力差は測れないものの、「準決勝でSuningを完封で破ったTop Esports」を決勝戦の舞台で2-3まで追い詰め、内容的にもかなり僅差まで迫ったJD Gamingの方が実力は上と見るべきだろう。

加えて、今年のLPL Spring、SummerにおいてJD GamingがSuningに後れを取ったことが無いことも自信につながる補強材料だ。

但し、世界大会の出場経験という面においては、JD Gamingはスターター選手全員が初出場であるのに対し、Suningには2013年から実に8回も晴れの舞台に立っているSwordArt選手がいる。彼の経験をどこまで他の選手に分けられるかが勝負の綾の一つとなりそうだ。

 

4.Gen.G vs G2 Esports

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正直この組み合わせが一番悩んだが、G2 Esportsの勝利を予想する。

両者の実力は伯仲しており、単純なチームパワーだけでは測れないこの2チームであるが、近年の国際戦においては「LECは荒れたゲーム展開に慣れていないLCKに強い」という傾向がある。

実際、2019年のMSIにおいてはLECがLCKに対し5勝2敗、WCSにおいては8勝4敗と大きく水をあけており、ある程度信頼できる見方と言っていいだろう。(ちなみに、LCKはLPLに強く、LPLはLECに強いと言われており、現在この3リージョンは「3すくみ」の関係にある)

グループステージでの結果(4勝3敗)が気になる向きもあるだろうが、3敗のうち2敗は1位通過したSuning相手の敗北、残り1戦はTeam Liquid相手に"いつもの発作"(別名:トロールスイッチ)が発動したもので、近年の世界大会ではノックアウトステージ以降に尻上がりに調子を上げている彼らにとってはあまり気にするものではない……と信じたい。

 

5.DAMWON Gaming vs DRX

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この対戦は「LCK Summer Finalsの再演」になるだろう。というわけでDAMWON Gamingの勝利を予想する。

LCK Summer Finalsの内容については実際に試合内容を観戦してもらうのが間違いないが、概説すると、(初戦こそやや時間がかかったものの)DAMWON GamingがDRXを完全に圧倒する形の3連勝でシリーズを締めくくったものだ。

その後のDAMWON Gamingに調子を落とした様子は一切なく、グループステージでもJD Gamingに1戦を落としたのみ。

DRXにとっては順当に行けば勝ちの目が薄いシリーズになってしまうが、なんとか大きな柱となっているChovy選手のレーニングの強さとDeft選手のリーダーシップを活かしてアップセットを引き起こしていきたい。

 

(文:あきのあまき)

【あきののろるにっき#34】「LJLは選手が変わり映えしないリーグなのか?」を検証してみた

こんにちは、あきのです。

昨日、OPL(オセアニア)リーグの閉鎖が発表されましたね。

 

地域におけるesports振興の不振等から、今シーズンからRiotはオセアニア地域への補助金を削減し、チームへの支援金も減少。

更には選手への最低年俸保証も削除され、有望な選手が海外に流出する等、選手は勿論所属チームも憂き目に遭いました。

しかし、そんな逆境にも負けずリーグ代表として今年のWCSに出場したLegacy Esportsは、プレイイングループステージにおいてCBLOL(ブラジル)代表のINTZ、TCL(トルコ)代表のPapara SuperMassive、そしてLEC(ヨーロッパ)代表のMAD Lions相手に勝利。確かな爪痕を残し、去っていきました。

来シーズンからは、おそらくこのLegacy Esportsも、LJLの公式リーグ化の頃からLJLのチームとスクリムをしてくれていたChiefs Esports Clubも、国際戦でRampageとライバル関係を築いたDire Wolvesも、昨年のWCSで存在感を見せつけたMAMMOTHも見ることができないでしょう。

その事実が残念でなりません。

 

さて、翻って、LJLにおける選手の現状はどうでしょうか。

「平均年齢が高い」「同じ選手ばかりが出場しており、変わり映えしない」という声をよく耳にします。

もしこれらが事実ならリーグ全体が活性化が不足している可能性を示唆しており、喜ばしいことではないでしょう(勿論それらの事実が直ちにリーグ閉鎖に繋がるわけではないでしょうが)。

そんな背景から、今回はLJLの公式リーグ化(2016年)以降のロースター選手の年齢やチーム在籍履歴等の情報を用い、他リージョンの情報とも比較しながら、LJLにおけるプロ選手の新陳代謝(=どれほど新しい選手がリーグに流入してきているか)の程度を検証しました。

 


1.用いた資料(結論だけ知りたい人は飛ばしても可)

LJL(日本)、LCK(韓国)、LEC(ヨーロッパ)、VCSベトナム)、CBLOL(ブラジル)の5つのリージョンにおいて、2016年~2020年にスターターとしてロースター登録されている選手をピックアップ(5年間の合計213チーム、選手数1,065名)し、それぞれの選手について以下の情報を取得しました。

なお、LJLの比較対象としてLCK(韓国)、LEC(ヨーロッパ)、VCSベトナム)、CBLOL(ブラジル)を選定した理由は、メジャーリージョンにおいてフランチャイズ制を導入しているリーグ(LEC)としていないリーグ(LCK)、メジャーリージョンとマイナーリージョンの中間に位置するリーグ(ベトナム)、マイナーリージョンから1リーグのピックアップとすることで、全リーグを見渡さずともある程度世界的な状況が俯瞰しやすいと考えたためです。

これらの情報はLeaguepedia様(https://lol.gamepedia.com/League_of_Legends_Esports_Wiki)からいただきました。

【取得した情報】

  • 2020年10月7日時点での年齢
  • プロチームの在籍履歴

上記の情報を加工し、以下のデータを得ました。

【加工して得たデータ】

  • 各シーズンにおける10月7日時点での年齢
  • 昨シーズン以前に同一リージョン内でプロ活動を行ったことがあるか否か

2.分析結果

上記のデータをシーズン別・リージョン別に比較した結果がこちらです。

※データは2016年~2020年の5年分を取得していますが、2016年は2017年以降のデータの比較用として用いているため、グラフ上は2017年~2020年の4年分のみが表示されています。

 

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縦軸に「リージョン内でロースター登録されている全スターター選手の平均年齢」、横軸に「リージョン内における新規登録選手数」を取っています。

後者についてはややこしいので詳説すると、

  1. 新人選手(2部リーグからの初昇格を含む) → 新規登録選手として扱う
  2. 昨シーズンまでに1度でも同じリージョン内でプロ活動を行った選手 → 新規登録選手として扱わない
  3. 他リージョンでのプロ活動実績はあるものの、当該リージョンには初参戦の選手 → 新規登録選手として扱う

というルールでカウントしています。

簡単に言うと「昨シーズンまでに当該リージョンの1部リーグで活動実績が無ければ、新人選手も助っ人ベテラン外国人も全て新規登録選手として扱う」ということです。


さて、改めてこのグラフを眺めると、意味合いとしてはおおよそ以下のものになると思います。

  1. グラフの左下(平均年齢が低く、新規登録選手も少ない) → プロ活動自体があまり活発でないリージョン
  2. グラフの右下(平均年齢が低いが、新規登録選手が多い) → 選手の新陳代謝が活発なリージョン
  3. グラフの左上(平均年齢が高く、新規登録選手が少ない) → 選手の新陳代謝があまり活発でないリージョン
  4. グラフの右上(平均年齢が高く、新規登録選手も多い)  → 選手の流動性は高いものの、新規加入した選手の年齢自体も高めなリージョン(他リージョンで実績を積んだ助っ人外国人が流れてくるリージョン等)


※※※免責※※※

本グラフに用いているデータは、主に以下の理由で正確でない可能性があります。

  • 各年の10月7日時点での年齢を平均年齢の算出に用いている(つまり、記載されている平均年齢はおおよその目安である)
  • 同じロールに複数人の登録選手がいる場合、任意の1人を選択している
  • Leaguepediaに年齢の記載が無い選手を除外している
  • Spring Splitのデータのみを収集し、Summer Splitのロースター変更を考慮していない
  • フランチャイズ制の採用の有無による差の調整を行っていない(フランチャイズ制を採用せず昇格戦があるリージョンの場合昇格チームが発生するとチームごとロースターが入れ替わることから、新規登録選手数は上昇する傾向があると思われる)

また、結局は5リージョンだけの分析です。他の地域を見れば、また別の視点が出てくるかもしれません。


3.結果のまとめ

サンプルとしたリーグ数が少ないため断定はできませんが、全般的に見て、メジャーリージョンは新規登録選手数が少なく、一方でマイナーリージョンは多い結果が見られました。

これは、マイナーリージョンは海外から実績を積んだベテラン外国人選手を招集する事がある事実や、選手市場が成熟しきっていないこと等が要因と考えられます。

加えて、グラフ上の位置関係から各リージョンの比較を行うと、おおよそ以下の推測が成り立ちます。

 

①LJL(日本)

リーグ全体の成熟傾向やフランチャイズ制の導入により落ち着いていく傾向があるものの、依然として選手の流動性(=新規登録選手数)は比較的大きい。

一方で、5リージョンの中で最も4年間での平均年齢の上昇幅が大きい(+1.2歳)ことから、新規加入した選手の年齢も高め(助っ人外国人含む)であることがうかがえる。

②CBLOL(ブラジル)

選手の流動性は非常に大きい。

一方で、LJLと同じく平均年齢の上昇幅は近年大きめ(4年間で+0.9歳)なことから、LJLと同じ悩みを抱えていると思われる。

③LCK(韓国)

選手の流動性は年によってまばらである。

LCKの特異性としてリーグ内のロースターのほとんどを自国リージョン内の選手で賄っている背景から、新規登録選手数=新たな新人選手の台頭数と考えると、国内における新陳代謝はそれなりに活発でことがうかがえる。

④LEC(ヨーロッパ)

LCKより若干平均年齢が高めで推移するも、2020年はやや抑えられ、平均年齢の上昇に歯止めをかけた。

新規登録選手数が比較的少ないのは、リーグの成熟と2019年からのフランチャイズ制導入等が要因と思われる。

VCSベトナム

非常に異質なリーグで、選手の流動性が大きく、一方で平均年齢は非常に低い。また、4年間での平均年齢の上昇幅も最も小さい(+0.2歳)。

リーグ内における選手の流動性(新陳代謝)が非常に活発な様子がうかがえる。

 

4.LJLは「選手が変わり映えしない」リーグなのか?に対する答え

以上の考察から、LJLは「選手が変わり映えしない」リーグなのか?という問いに対する答えは「否」となるでしょう。

但し、世界的に見ても選手の年齢層が高めであることは事実で、これは「若手の有望な選手の流入が少ない」ことを示唆しています。

この状況を捨て置いた場合、選手間の競争環境の喪失による実力向上の機会損失やベテラン選手引退時におけるリーグ全体の実力低下など、選手層の硬直化に伴う弊害が発生するおそれがあります。

この状況の解決策として、近頃何かと話題になっている日本サーバチャレンジャー帯における競争環境の向上等、これまでに引き続きRiot Games Japanが継続して対策を打ち続けていってくれることを願っています。

 

(文:あきのあまき)