あきののろるにっき

League of Legends(LoL)に関するさまざまなことを記事にしていきます。 twitterは@AkinoAmaki_LoL

Riot Game"s"になった日。そして宣戦布告。

昨日、League of Legendsの10周年記念が開催されました。

www.youtube.com

10周年記念版Riot Plsの動画の中で発表されたトピックスは以下の通りです。

  • 10日間に分けて特別なログインボーナスを配布
  • マップが10周年記念バージョンに模様替え
  • ユアショップの開店(レジェンダリースキンも当たる特別版)
  • 4年ぶり、全チャンプが使用可能なUltra Rapid Fireモード解禁
  • Riot Games Social Impact Fund(Riot Gamesの寄付関係を取り仕切るNPO法人)の創設
  • 上記創設に伴う新スキン「秩序の光カルマ」の売上の全額寄付実施
  • アラビア語の順次対応開始
  • プレシーズンにおけるサモナーズリフトの変更予定内容発表
  • 新チャンピオン「セナ」の発表
  • TFTのアップデート内容発表
  • LoL及びTFTのモバイル対応発表(通常のLoLはコンシューマ機も対応)
  • LoL eSports Manager(プロチームのコーチになるゲームと思われる)の発表
  • タクティカルシューターゲーム(通称:Project A)の発表
  • Evoで明かされていた格闘ゲーム(通称:Project L)の映像公開
  • オンラインカードゲーム(League of Runterra)の発表
  • MMORPG(通称:Project F)の映像公開
  • ヴァイとジンクスの幼少期を描くと思われるアニメーション作品(Riot Games Arcane)の発表

私が特に驚いたのが太字の部分。MOBA以外のゲームジャンルへの本格進出です。*1

EVO(世界最大級の格闘ゲームの祭典)で明かされていた格闘ゲーム(Project L)に続き、多方面の進出をしてきました。

本記事では「この一気呵成ともいえる進出劇の裏で、これまでRiotがどのような布石を打ってきたのか」及び「この進出の狙いは何か」を推察してみたいと思います。

 

 

 

1.Riotが打ってきた布石

(1)ユニバース

Riotが打った第一の布石。それは2016年に発表されたユニバースです。チャンピオン、地域に関する情報やバックストーリーとなる小説まで用意されたこのユニバースは、それまで「チャンピオンの大まかな背景」の域を脱していなかったLoLの世界観に非常な深みを与えました。

 

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チャンピオンのユニバース。出身地や概略等の他、特別な小説が用意されていることが多い。

 

「この地域の特色は?」「なぜこのチャンプとこのチャンプは対立しているの?」といった地域・チャンプの根幹を形作る情報から、「ルシアンが持っている二丁拳銃のうち、どちらが元々セナの持っていた銃?」といった細かな設定まで全てが暗示・明示され、LoLを形成するルーンテラ世界に関する情報量が爆発的に増加したのです。

更に言えば、2018年に公開されたルーンテラマップ。これがとどめでした。

それまで主に文字情報に依存していた情報が可視化され始めたのです。

 

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イオニアに生息している生物の画像。ルーンテラマップでは、従来不明であった細かな環境・自然・習俗等が垣間見られる。


 

設定の深堀りによって、Riotが得たかったものは何か?

それは「League of Legendsの世界観」という名の知的財産(IP)に他なりません。

(何故この知的財産を得たかったのかについては後述します)

 

(2)TFT

Riotが打った第二の布石。それは今年発表された新しいゲームモード、TFTです。

TFTが発表されたとき、ほとんどのサモナーはこう思ったはずです。「新しいゲームモードって言ってるけど……いままでのLoLのゲーム要素、無くね?」

実際その通りで、当時は私も「流行りのオートチェス系ゲームにRiotも手を出したんだな」くらいにしか捉えていませんでした。

しかし、今振り返ってみてみると、TFT導入の目的の一つには「LoLの世界観は維持しつつも全くかけ離れたゲーム性を提供した場合、既存のプレイヤーはついてくるのか?」の実験の意味合いもあったと思われます。*2

そして実際TFTは非常な成功を収め、ARAM以来の常設ゲームモードに君臨したことから、Riotはプレイヤーたちが「League of Legendsという世界観に価値を見出しており、異なるゲーム性でも楽しむこと」ことに確信を抱いたでしょう。

 

さて、ここまでの説明で「ユニバースの登場により、LoLの世界観の構築が大きく前進し、IPに大きな価値が付与されたこと」「Riotが『プレイヤーは世界観にも価値を見出しており、異なるゲーム性でも楽しむ』のを確認できたこと」を説明しました。

次の段落では、この2つの要素がどのように「多方面のゲームジャンルに進出する」ことに絡むのかを説明します。

 

2.多方面への進出の狙い

(1)Blizzard社の存在

突然ですが、皆さんはBlizzard社ってご存じですか?

近年ではオンラインカードゲームの「ハースストーン」やタクティカルシューターゲームの「オーバーウォッチ」を、古くはMMORPGの先駆け的存在「ディアブロ」や名作「ワールドオブウォークラフト」等を手掛けている企業です。*3

 オンラインカードゲーム、タクティカルシューターゲーム、MMORPG……そう、全てこれからRiotが進出しようとしているジャンルです。

つまり今回の進出は、RiotからBlizzardへ「今から君の主要タイトルのシェアを奪いに行くからな」という宣言なのです。

(2)何の自信があってそんな宣言ができるのか?

上述した通り、「League of Legendsという世界観のIPに大きな価値があること」及び「Riotが『プレイヤーは世界観にも価値を見出しており、異なるゲーム性でも楽しむ』のを確認できた」ことから、「他ジャンルにLoLの世界観のゲームを展開しても、十分勝算が得られる」と考えたためでしょう。

つまりRiotは、「LoLというゲーム」と「LoLの世界観」の切り離しに成功したのです。

 

3.Riot Game"s"になった日。そして宣戦布告。

Riot Gamesは昨日、真の意味でのRiot Game"s"となりました。

この"s"を付けるためにRiotが行ったのは「徹底した世界観の構築」、言い換えれば「ゲームを作らずしてゲームを作ること」だったというのは非常に興味深く、そして皮肉な事だと感じざるを得ません。

今回の10周年記念版Riot Plsは、全体的に和やかな雰囲気で構成されていました。しかし実際の内容は、他社に対する激烈な宣戦布告に他なりませんでした。

 

今後、戦いのためにどのような戦術を採るのか。Riotの動向から目が離せません。

 

 

 

 

 

*1:TFT実装時点で進出していたと言えなくもないですが、Riotとしてもゲームモードの一つという位置付けにしているので除外。

*2:所謂オートチェス系ゲームのLoLへの人口流入等、他の目的も当然あったことは前提で。

*3:説明の関係で省きましたが、他にもRTSの傑作「スタークラフト」シリーズ等も開発されています。