【あきののろるにっき #5】パーフェクトゲーム! KT Rolsterが見せたスノーボールのお手本
こんにちは、妻に適当なジャンナの絵文字を送ったら、秀逸なナミの絵文字で返されたあきのです。
さて、先日行われたLJL2020 Spring Split Week6 V3vsBC戦において、V3が見事なパーフェクトゲーム(1度もデッドせず、かつタワーやドラゴン、バロン等のオブジェクトも一切取らせないで勝つこと)をやってのけました。*1
ところで、実は今週、LCKでもGRF vs KT戦でもKTによるパーフェクトゲームがあったんです。
そして、その内容が「たった1回のmid gankを起点にパーフェクトゲームまでもっていく」という、スノーボールのお手本のような内容だったので、簡単に解説したいと思います。
1.ドラフト
(1)GRF側のねらい
GRF側は断食セナ、エズリアルのポーク構成を採用。
全体的にパワースパイクは中盤~終盤に寄っているため、序盤はアジールがレーンを押し込んだうえでエリスを中心にマップのコントロールを取り、リスクを減らす想定でしょう。
中盤以降からはエズリアル・セナを中心にポークと回復で相手とのHP差を作りつつ、マオカイのエンゲージ、アジールのシュリーマシャッフルでブリンクを持たないヴァルスを捕らえたいという意図が見えます。
30分頃までグローバルゴールド差2k~3k程度の不利で経過できれば、要塞と化したマオカイをキャリーに張り付かせて集団戦に勝利することができるでしょう。
(2)KT側のねらい
GRFが採用した断食セナ・エズリアルのポーク構成に対し、まずタム・ケンチを取りました。これはセナ、タム・ケンチのOPデュオを回避する狙い。
加えて、近頃断食セナのカウンターとして出てきた脅威ヴァルスをピックし、レーン戦におけるBotの有利を確定させました。
更に、midはGRFのアジールに対しヴェル=コズを取ったことで、全レーンがレーン戦で有利~互角となった代わりに、後半はマオカイを溶かす火力を出すのが難しくなるため、序盤からオブジェクト差を付けていく必要があります。
2.ゲーム内容
以下、青文字のチャンプはGRF(ブルーサイド)、赤文字のチャンプはKT(レッドサイド)を指しています。
(1)スノーボールの起点となったGank
KTは序盤から有利を取っていく必要があるため、JGのリー・シンを積極的に動かしていく必要があるところ、00:43時点でGRFのエリスによって赤バフにワードを置かれてしまいました。これでリー・シンが赤バフスタートである情報がGRF側に流れます。
さて、レーン戦開始直後から主導権を取るため、GRFのアジールはヴェル=コズに対しLv1から積極的にプッシュ。
勿論赤バフスタートであることは織り込み済みで、アジールもBot側に体を寄せはしていましたが、ヴェル=コズがQのスロウを当てたことでリー・シンが追いつき、アジールのヒールとフラッシュを落とします。
ヒールとフラッシュのCDはそれぞれ240秒、300秒ですから、このGankで、KTはCDが上がる7:13までアジールにレーンをプッシュできなくさせました。
アジールがミニオン吸収装置までもってきて取りたかった「Midレーンの先プッシュ権」を、たった一度のポジションミスによって喪失させたのです。
ゲーム時間にして僅か02:13。極端に言えば、このゲームはここで勝敗が決まりました。
(2)何故わずか2分でゲームが決まったのか?
現在のプロシーンは、「Midの先プッシュ権」が特にゲーム全体に影響を及ぼしやすい環境となっているからです。特に、ドラゴンの取得競争に影響するという事実が大きいでしょう。
前シーズンまではドラゴンを捨てる判断もままありましたが、今シーズンから導入されたドラゴンソウルは(クラウドソウルを除き)勝利の獲得とほぼ同義語である程強力であることから、ドラゴンを4つ獲得することが勝利の方程式の一つとなっています。
では、ドラゴンを取るために必要な事前準備とは何でしょうか?例えば以下のようなものが挙げられます。
- Midレーンの有利
- Botレーンの有利
- 視界の取得(スカトルの取得)
これらを重視したGRFのアジールは、KTのヴェル=コズに対しレーンを押し込むために(前述の通り)ミニオン吸収装置まで持っていったのですが、1ミスを突いたKTがそれを完全に無効化させました。
すると、KTは
- 先にMidを押し込んでヴェル=コズが先に寄れるため、スカトルを取れる
- 先にMidを押し込んでヴェル=コズが先に寄れるため、サイドレーンへのエリスの圧力を減らせる
- 先にMidを押し込んでヴェル=コズが先に寄れるため、ドラゴンを取れる
と、好影響を全レーンに波及させることができました。
事態打開のため、GRFはエリスがどこかのレーンにGankを刺そうにも、
①TopはGankして1キルをとってもカウンターでドラゴンを取られるうえ、マオカイvsケネンのマッチアップでは1回Gankを刺した程度では有利を取り切れないですし、
②Midはヴェル=コズが一瞬でウェーブクリアをしてしまうためGankのチャンスがありません。(無理に取ろうとフラッシュもヒールも無いアジールがEのブリンクスキルで前に出ると、リー・シンにカウンターを取られる可能性があります)
③加えてBotはレーン戦の相性が悪く、押し込んできたところにGankを刺そうにも、前述の通りヴェル=コズがMidから先に寄れる環境。
結果として、GRFは全レーンで不利を背負う形となりました。
(3)その後の流れ
以降、KTがゲーム開始後5分までで大きく手繰り寄せた有利をどのようにスノーボールさせていったかを見ていきたいと思います。
①8:10時点 Midの有利をヘラルドに変換
サモナースペルの有利からMidを先に押し込み続けたヴェル=コズは、ケネンとリー・シンを交えてヘラルドに手を付け、取得します。
②8:47時点 ヘラルド取得時に獲得したマオカイのキルをドラゴンの有利に変換
ヘラルド攻防戦でデッドしたマオカイがTopにテレポートしファームを行ったため、その後に発生するBot側でのドラゴンファイトに参加できなくなり、KTがドラゴンを取れることに。
③11:34時点 ハイパーinSec
bonO選手のリー・シンによる見事なinSecにより、Botアウタータレットとインナータレット、ドラゴンを取得。
④14:45時点 ハイパーinSecその2
再びbonO選手のリー・シンによるinSec。Midのアウタータレットを獲得します。
⑤18:47時点 スノーボールにより稼いだゴールド差をドラゴンに変換
ドラゴンを挟んでのにらみ合い。KTはGRF側にエンゲージの要となるマオカイのUltもアジールのUltもない状況を把握していることから、構成通りヴェル=コズとヴァルスでポークを行います。
通常であればGRF側は引く一手ですが、このドラゴンを渡してしまうとKTは3つ目のドラゴン獲得となり、次のドラゴンが湧いた際に4つめのドラゴン(すなわちドラゴンソウル)とバロンのどちらかを取られてしまう事態に陥ることから、素直に渡すこともできません。
その状況を分かっているKTは、自分たちでドラゴンを一切触ることなく、ヴェル=コズとヴァルスが40秒以上にわたりひたすらポークを継続。結果として2キルとドラゴンを獲得します。
⑥20:00時点 スノーボールにより稼いだゴールド差をバロンに変換
20分直後から即バロンを敢行。ポーク構成の為決して早くはありませんが、Topサイドのジャングルの視界を取り切っているため問題なく取得します。
⑦22:42時点 インヒビター攻防戦
インヒビター攻防戦。マオカイが良い形でヴァルスにスネアをかけましたが、サモナースペルの有利を起点としてこれまでに作り上げてきたグローバルゴールド差10kの有利を火力に換算したヴァルスが事前にポークでHPを削っていたため、GRFはほかの4人が続くことができません。結果として、KTがTopとMidのインヒビターを獲得します。
⑧28:40時点 ラストファイト
一縷の望みをかけ、GRFがマオカイのバックTPからエンゲージを仕掛けます。
この試合で唯一GRFが連動して動いた集団戦で、マオカイとアジールの息が合った仕掛けでしたが、もはや13k差はどうしようもありませんでした。
⑨ゲームエンド
そして最後はちょっと締まらない感じでゲームエンド。(せっかくなので最後は韓国語放送から)
3.最後に
パーフェクトゲームというのはなかなか見ることができない珍しいものですから、まさかKT、そしてV3と2日連続で見られるとは思っていませんでした。
なお、このゲームはTwitchのLCK_Japanチャンネルにおいて実況 abaraさん、解説iSeNNさんで日本語実況もされていますので、是非一度そちらでゲーム全体を通してみていただき、KTの美しい試合運びを見ていただけるとうれしいです!
(文:あきのあまき)