【あきののろるにっき #8】6,000ゴールド差をひっくり返した3分22秒の攻防。LJLの歴史を塗り替えたSGの力。
実に946日ぶり。
DFMがBo5で苦戦し、5戦目開始の合図であるSilver Scrapesを響かせたのは、LJL 2017 Summer Split Final(2017年8月26日)が最後”でした”。
そう、昨日ついにこの記録が更新されたのです。
LJLの歴史を塗り替えた侍の名はSengoku Gaming。
この革命をもたらすうえで、最も重要だったゲームはGame4でしょう。
1-2で負け越して崖っぷちだったこのゲーム、勝利につながった一番の要素は、32:08にSGがエルダーをシージし始めたことによる、3分22秒にもわたる長い長い攻防戦でした。
グローバルゴールドで6k差の不利を背負いながら、ギリギリまで勝利を希求した侍たちの攻防戦に、今回は焦点を当てたいと思います。
1.ドラフト概要(チーム構成の狙い)
以下、青文字はDFMのチャンピオン、赤文字はSGのチャンピオンを指しています。
(1)DFMのドラフトの狙い
序盤はマッチアップの有利を握っているTopのナー、Midのシンドラを中心にゲームを進める意図が見えます。特に、Midを押し込んだシンドラがエリスと共に動いてサイドレーンにプレッシャーを作る形です。
中盤以降はタム・ケンチのUltによるサイドレーンのキャッチを狙ったり、タム・ケンチのWによる救出を前提としたエズリアルの積極的なポークでオブジェクト前のにらみ合いを行います。
一方で、強力なエンゲージスキルががナーのUltしかないことが難点。つかず離れずの距離からのポークで戦いつつ、機を見てSGのダメージディーラーであるビクターやヴァルスを一気に落としたいところ。
(2)SGのドラフトの狙い
DFMとは逆にBotからゲームを作っていく構成です。
序盤のBotの有利を活かしてドレイクを獲得しつつ、中盤以降はヴァルスのUlt、スレッシュのフックやエイトロックスがテレポートで裏を取る等の行動からエンゲージを狙います。
集団戦では、エイトロックスとオラフが前線を構築しつつ、ビクターのWとUltによるゾーンコントロールやスレッシュのピールでビクターとヴァルスがダメージを出しやすい環境を作ることが可能。
加えて、ビクターのEとヴァルスのQによるポークもあり、にらみ合いも強い形です。
2.攻防戦開始前の状況
(1)グローバルゴールド差
SGはDFMに6kの不利を付けられています。
この差は主にTop(3k差)とBot(1.5k差)でついており、ナーのスプリットプッシュ性能及びエズリアルのダメージ量として影響が表れています。
(2)ナーのスプリットプッシュ
上述の通り、ナーはコアアイテム1つ分の有利をエイトロックスにつけた状態でスプリットプッシュをしています。
このままSGが手を打たず放置してしまうと、ナーにゲームを壊されてしまいます。
(3)テレポート(TP)の有無
更に悪いことに、DFMのナーはTPのCDが上がっている一方で、SGのエイトロックスはまだ上がっていません。
このため、エイトロックスはどうしても先に徒歩でオブジェクトの近くに寄らざるを得ず、ナーがスプリットプッシュしやすい環境となっています。
(4)ナーの「ぷんすこ」ゲージ
この点だけがSGにとって好材料で、攻防戦開始直前がナーがメガナーからミニナーに戻ったタイミングであることをSGは知っています。
ナーのスキルをご存じない方に簡単に説明しますと、ナーのパッシブスキル「ぷんすこ」は、ダメージを与える・受ける等をすると「ぷんすこ」ゲージが増加し、ゲージがMAXになるとメガナーに変身することができるスキルです。
メガナー状態は永続するわけではなく、15秒後にミニナーへと戻りますが、このとき、15秒間「ぷんすこ」ゲージが溜まらず、メガナーになることができません。
そして、ナーのUltはメガナーでなければ発動できません。
つまり、これから最低でも15秒間、DFMからエンゲージされることは無いことをSGは知っているということです。
3.攻防戦の内容
(1)TPの駆け引き、そしてにらみ合い
上述の状況から、SGはエルダードラゴンが出現した瞬間に狩り始めることで、ナー(ミニナー)のTP使用を強制させました。
この動きだけで、SGは
- DFMが持っていたTPの有利を浪費させ
- そのまま進められると不利が拡大していたナーのスプリットプッシュを強制的に中断させ
- 「ぷんすこ」ゲージをためてエンゲージしようにもミニオンがいないため、ナーが集団戦で活躍しにくい状況を作り上げる
という一石三鳥の効果を生み出しました。
ある程度の成果を得たこと、また集団戦になるとグローバルゴールド差から敗北の可能性もあるということで、SGは一旦撤退。にらみ合いに持ち込みます。
DFMにはポークが得意なエズリアルがいますが、SGにも3コアを持って育っているヴァルスとビクターがポーク出来ること、加えて、ビクターであればダメージを食らってもTPで戻ってくることができるという「保険」がある等からの判断でしょう。
そしてここから2分間にわたって続いた、エルダードラゴンを挟んだ長い長い攻防戦。
Midレーンの押し引き等の駆け引きをしつつも互いに決定打を打てないまま続いたこの攻防戦に終止符を打ったのは、ピルトーヴァーから来た”機械文明の先触れ”でした。
(2)Pirean選手のワードプット&バースト
攻防戦が始まってちょうど2分。34:08にビクターがBotリバー付近のブッシュにワードを挿します。
DFMはゾンビワードで見えていたはずですが、常にBotサイドからプレッシャーを受け続けていたため気づけず、結果として、チームの陣形、特にキャリーであるエズリアルの位置がSGに筒抜けになってしまいました。
更に、タム・ケンチのWが使われ、エズリアルの救出手段がなくなったのを見てとったビクターが奇襲。
バーストダメージによりエズリアルを瀕死にし、ほとんどダメージを出せない環境を作り出しました。
ここから一気にSGがDFMへとなだれ込んで行きます。
(3)DFMのカウンター、それを躱したPirean選手とBlank選手
しかしDFMも負けてはいません。唯一のエンゲージ手段である、ナー(メガナー)のUltをきっちり準備していたEvi選手は、集団戦の主要なダメージ源であるビクターに加えてオラフ・エイトロックスの3体を巻き込んだカウンターエンゲージを行います。
が、Blank選手(オラフ)とPirean選手(ビクター)はCCを食らった瞬間にストップウォッチを発動。
これで、DFMが隙ありと叩き込んだエズリアルのUlt、シンドラのWとGLP-800、ナー(メガナー)のWを全て回避します。
一瞬でもストップウォッチの発動が遅ければ二人ともデッド。
仮に3v5になっていれば、DFM側のミニオンが大量にMidに溜まっていたことから、インヒビターの破壊は確実。全く異なったゲーム展開になっていたでしょう。
(4)日本人Bot Duoコンビのスキル精度
そしてこの40秒に及ぶ集団戦で見逃せないのが、実況でも触れられていたYutoriMoyashi選手とEnty選手のDuo Bot。
YutoriMoyashi選手はヴァルスのQを5発撃ち、キャリーに3発当て、残る2発でエリスのストップウォッチとフラッシュを使用させました。
一方のEnty選手はスレッシュのフックを2発当て、タム・ケンチにWを使わせ、更にナーのキルとHP有利をもぎ取りました。
(5)エルダードラゴンの獲得
DFM側はナーがデッド、エリスはHPが少なく、シンドラはマナがカラでダメージを出すことができない状態。
頼みの綱のエズリアルはフロントラインが無いこと、スレッシュのフックによりタム・ケンチのWを無駄遣いさせられていることから積極的に前に出ていけず、最終的に撤退を判断します。
一縷の望みをかけてスティールを狙ったエリスもビクターがポークして追い出すことに成功。長い長い攻防戦の末、遂にSGはエルダードラゴンを獲得。
このバフによって盤面の有利を得たSGは続いてバロンを獲得、次々とタワーを破壊。エルダードラゴンを狩り始める前に6kあったグローバルゴールド差をほぼイーブンに戻し、最終的に勝ちにまで繋げました。
4.おわりに
このBo5、SGがDFMよりも明確に上回っていたもの、それはドラフト力でもチーム力でもなく、どんな状況になっても慌てない「冷静さ」でした。
マップを見る。戦況を読む。オブジェクトを触って相手を誘い込む。
全てをDFM以上の精度で実施したからこその勝利と言えると思います。
類まれな「冷静さ」をもってFinalの切符を一番乗りで手にしたSGは、5月の最終戦に次は何を見せてくれるのでしょうか?今からとても楽しみです!
(文:あきのあまき)