【あきののろるにっき#13】まるでLEC!バックドアを敢行したDFMの「疾駆」と、それを防いだEnty選手の「冷静沈着」
こんにちは、あきのです。
皆さんは昨日のLJL2020 Spring Split Finalsを観戦されましたよね?
プレイオフで一度はSGに敗れていたDFMが、ドラフト段階から高い修正力を発揮してリベンジを果たしたシリーズでした。SGのストロングポイントであるBotに対し真っ向から勝負を仕掛け、打ち破ったDFMは、まさに優勝にふさわしいチームであったと思います。
……ですが、皆さんも分かっているのではないでしょうか?
観戦していて一番刺激的だったゲームは?
そう、SGがAA1発の差でバックドアを防ぎきり、勝利を果たしたGame3のはずです。
今回はそのGame3、まさにDFMがバックドアを敢行した直後の場面から、DFMの行動とSG(主にEnty選手)の行動を紐解き、
「何故DFMはバックドアを決められなかったのか?」
「なぜSGはバックドアを防ぐことができたのか?」
を確かめていきたいと思います。
まずは一連の流れを思い出していただきたく、下の動画をご覧ください。話はそこから始めましょう。
- 1.バックドア開始までの流れ
- 2.バックドア開始後
- (1) 39:50 DFM:アジールがMidのミニオンを攻撃
- (2) 39:52 SG :スレッシュがバックドアを察知
- (3) 40:02 DFM:SG側のテレポートをキャンセル
- (4) 40:09 SG :スレッシュによるネクサスタワーシージの妨害
- (5) 40:12 DFM:ナーがジグスのUltを被弾
- (6) 40:13 DFM:アジールがフラッシュを使用
- (7) 40:14 SG :スレッシュがランタンを設置
- (8) 40:16 DFM:ナーがAAキャンセルをミス
- (9) 40:16 SG:スレッシュがフックでアジールをキャッチ
- (10)40:20 DFM:ナーのフラッシュインUlt
- (11)40:21 SG :ジグス登場
- (12)40:22 SG :ジャーヴァンⅣがアジールをノックアップ
- (13)40:26 SG:残るDFMメンバーのキル
- (14)40:44 DFM:カルマのバックドア失敗
- (15)41:15 SG:逆転勝利
- 3.おわりに
1.バックドア開始までの流れ
(1)DFMの動き
DFMは複数人でのバックドアをすると見せかけ、既にマウンテンドレイク前に位置していたSGを強制的にリコールさせることに成功します。(画面右下のミニマップをご覧ください)
これでドラゴン前のポジションの有利を得たDFMは、ナーとアジールのバックドアを敢行すると同時にドレイクを触る事でSGをドラゴンピット前へ釣り出し、バックドアの成功率を高めています。
(2)この時点におけるオブジェクト周りの状況
①SGの陣地の状況
TopのインヒビターとMidインヒビタータワーに加えてネクサスタワーが1本破壊されており、更には残り1本のネクサスタワーも残りHPが3割。DFMはTop・Midの両方から侵入し、バックドアを行える状態です。
②ドレイクの取得状況
両チームとも3ドレイクを所持しており、(既に沸いている)次のマウンテンドレイクを取得した方がドラゴンソウルを獲得することになります。
マウンテンソウルは非常に強力なため、SGとしてはDFMに渡したくない状況。
2.バックドア開始後
ここからは秒単位で変化する状況を逐次追っていきます。(DFM側のチャンピオンは青文字で、SG側のチャンピオンは赤文字で記載しています)
(1) 39:50 DFM:アジールがMidのミニオンを攻撃
まずは下の動画において、右下のミニマップにおけるアジールの挙動をご覧ください。
SG側のスーパーミニオンの前でやや立ち止まっているのがお判りでしょうか。
メイン画面がドラゴンピットを映しているので詳細は不明ですが、おそらくW(目覚めよ!)で兵士を召喚し、スーパーミニオンを1発攻撃した後、E(流砂の衝撃)で兵士の場所へブリンクしたものと思われます。
バックドアの為には何より早くネクサス前に到達することが重要であるところ、結果的にこのタイムロスは大きなものになりました。
(2) 39:52 SG :スレッシュがバックドアを察知
アジールがドレイクの攻防戦に寄らずネクサスへ向かっていること、及びナーがドレイク前に見えない事からバックドアを察知したスレッシュは、即座に単騎でネクサスタワーの防衛に回ります。
(3) 40:02 DFM:SG側のテレポートをキャンセル
ドラゴンソウルの争奪戦に勝利したDFM。
バックドアを防ぐためにネクサス前に戻ろうとするエイトロックスのテレポートを、セトがフラッシュインからのE(フェイスブレイカー)でノックバックさせ妨害します。
実はこの妨害、本当にギリギリのタイミングで、テレポートの詠唱完了(4秒)の寸前(3.9秒)時点でのキャンセル。
フラッシュインしていなければ絶対に間に合っておらず、セトのこの動きはまさに値千金でした。
(4) 40:09 SG :スレッシュによるネクサスタワーシージの妨害
ネクサスタワー前に到着したスレッシュは、アジールにイグゾーストを掛けたうえでE(絶望の鎖)でノックバックさせます。
ナーよりもシージ能力の高いアジールに妨害スキルのリソースをつぎ込んでおり、この状況であってもEnty選手が冷静に判断していることがうかがえます。
(5) 40:12 DFM:ナーがジグスのUltを被弾
ネクサスへの戻り際にジグスが放ったUlt(メガインフェルノボム)がナーに当たり、HPが2割削れることに。
ですが、画面左下に表示されているスキルのクールダウン表記を見ていただければわかる通り、このUltはE(ぴょんぴょん)で回避可能でした。
もし冷静に回避していれば生存時間が延び、ネクサスを破壊しきれたはずだっただけに、非常に惜しい判断ミスとなりました。
(6) 40:13 DFM:アジールがフラッシュを使用
アジールがスレッシュによるリデンプションの攻撃を回避するため、フラッシュを使用します。
しかし、自身の体力がMaxであり更にマウンテンソウルのバフもあること、リデンプションにはCCが無い(=ネクサスへ与えるダメージが変わらない)ことを考えれば、非常に難しい判断ですが、リスクを冒してでも歩いて回避するか素直にダメージを受けておくべきでした。
そして、このフラッシュ使用は後に大きな影響を及ぼします。
(7) 40:14 SG :スレッシュがランタンを設置
ギリギリのネクサス攻防戦の中でもスレッシュは冷静にランタンを設置。これによりジャーヴァンⅣの合流速度が数秒早くなり、結果的にネクサスの破壊を防ぐ要因となりました。
(8) 40:16 DFM:ナーがAAキャンセルをミス
以下の動画をご覧ください。
たった一度だけですが、ナーがAA→移動の操作を誤り、AA一回分のタイムロスが発生しています。
(9) 40:16 SG:スレッシュがフックでアジールをキャッチ
スレッシュがQ(死の宣告)によりアジールをキャッチ。このQは、先程リデンプションの回避にフラッシュを使っていなければ避けられたはずでした。
更に見逃せないのは、この際のEnty選手によるフックの撃ち方。こんなギリギリの状況であっても、フックを投げる方向が見難くなるよう、敢えて横を向いてからスキルを放っています。ここからも、Enty選手の類まれな冷静さがうかがえます。
更に、キャッチしたアジールの元へブリンクすることでアジールのUlt(皇帝の分砂嶺)の壁を無効化し、更にジャーヴァンⅣをアジールの至近に引き寄せるメリットまで生み出しています。
(10)40:20 DFM:ナーのフラッシュインUlt
SG側のチャンピオンが揃い、アジールがキルされると気づいたナーがフラッシュインからUltを発動。
これにより、ミス・フォーチュンとジャーヴァンⅣをスタンさせ、スレッシュをノックバックさせることに成功します。
ナーのこのファインプレイにより、アジールのAA3発分の時間を稼ぎました。
(11)40:21 SG :ジグス登場
ギリギリまでダメージを稼いだナーでしたが、戻ってきたジグスのQによってついに倒れます。これでネクサスをシージするダメージ源はアジールのみとなりました。
(12)40:22 SG :ジャーヴァンⅣがアジールをノックアップ
ナーのUltでスタンされる直前に挿しておいたおいたE(デマーシアの旗印)にむけてジャーヴァンⅣがQ(ドラゴンストライク)。
これでアジールをノックアップさせ、ミス・フォーチュンがキル。これでついにDFMがネクサスをシージする手段がなくなりました。
(13)40:26 SG:残るDFMメンバーのキル
最後の詰めとしてネクサスに向かうアフェリオスをエイトロックスが大きく削り、ミス・フォーチュンがキル。更にセトも落とし、DFM側の残りはカルマのみに。
(14)40:44 DFM:カルマのバックドア失敗
カルマが単騎でバックドアを試みるも、無情にもこのタイミングでインヒビターが復活、ネクサスのシージが不可能に。これでDFM側の勝利はなくなりました。
(15)41:15 SG:逆転勝利
一転攻勢、ジグスとミス・フォーチュンがDFM側のMidレーンを貫き、ネクサスを破壊。SGの勝利となりました。
3.おわりに
ナーがジグスのUltを食らっていなければ。
アジールがスレッシュのQを避けるためにフラッシュを残せていれば。
ミスに関するifはどこまでもキリなく連ねることができるのかもしれませんが、それ以上にこの記事ではEnty選手を称えさせてください。
Enty選手はネクサス前でどこまでも冷静でした。
アジールとナーを比較し、シージ能力の高いアジールに全スキルを費やして妨害し。
アジールとナーのリソースを削るため、適切なタイミングでリデンプションを使い。
ギリギリの攻防戦の中でもきっちりランタンを設置してジャーヴァンⅣを呼び寄せ。
方向を読みにくいフックを投げてアジールを捕まえました。
そのどれか一つでも行えていなければ、3-0でDFMの優勝が決まっていたでしょう。
「絶対にバックドアさせない」という意志のこもったEnty選手の「冷静沈着」は、まさにプロ選手のそれでした。
好勝負を、ありがとうございました。
(文:あきのあまき)