あきののろるにっき

League of Legends(LoL)に関するさまざまなことを記事にしていきます。 twitterは@AkinoAmaki_LoL

【あきののろるにっき#28】隣の芝からLJLを考える(後編) ―将棋業界の施策について、LJLへの応用を考えてみる―

こんにちは、あきのあまきです。

今回は前回の記事(前編)の続きですので、いきなり本編からどうぞ。

 

 

1.前回のおさらい

前回の記事 では、LoLというゲームには初見で楽しめないという難点があることを課題として挙げたうえで、同じ苦しみを長らく味わってきた「将棋」が人口減少の歯止め・若年層の取り込みのために

  • 今どちらが有利かを可視化する技術を有効活用すること
  • 将棋そのものよりもプロ棋士が持つストーリーに焦点を当てたこと
  • 将棋人口増加のために『カジュアル層』の増加を受け入れたこと

などで一定の成功を収めたことを紹介しました。

そのうえで、今回の記事ではこれら将棋業界での施策をなるべく低コスト(費用・時間)でLJLに応用・適用し、観戦人口を増加させるアイデアとしてどのようなものがあるかを、あえて運営になりきって考えてみたいと思います。

そのために、まずは「人がどのようなプロセスで新たなモノに誘引される(今回の場合はLJLを観戦する)」のかを考えてみましょう。

 

2.AIDMAモデル ~人が対象を知り、購入するまでの心理状態~

AIDMAモデルとは人の5つの心理状態からなるモデルで、

  • Attention(認知):対象を知る
  • Interest(関心):対象に関心(興味)を持つ
  • Desire(欲求):対象が欲しいと思う
  • Memory(記憶):対象のことを記憶する
  • Action(行動):実際に購入する(可能であればリピーターとなる)

という「人が対象を知り、購入するまでの心理状態」を表したものです。*1

今回の記事の趣旨に沿って言い換えるのであれば、

  • Attention(認知):LJLの存在を知る
  • Interest(関心):LJLに関心(興味)を持つ
  • Desire(欲求):観戦したいと思う
  • Memory(記憶):LJLのことを記憶する
  • Action(行動):実際に観戦する(可能であればリピーターとなる)

となるでしょうか。

ここで言いたいことは、実際にLJLの観戦人口を増加させるには、上記の5つの心理状態をバランスよく喚起する必要があるという事です。

とはいえ全てを書くには記事が長くなりすぎてしまうので、今回は「Interest(関心):LJLに関心(興味)を持つ」「Action(行動):実際に観戦する」に絞って考えてみたいと思います。

 

3.Interest(関心):LJLに関心(興味)を持たせるには

(1)LJL(LoL)そのものよりも選手のストーリーに焦点を当てる

前回の記事で書いた通り、将棋には「観る将」という概念があります。

「観る将」は将棋をほとんど指さず、主にプロ棋士の対局を観戦する勢力なのですが、LoLにもサモナーズリフトやハウリングアビス等には行かずにLJLの観戦のみを行う層が一定数おり、(その割合はともかくとして)この点で両者は非常に似通っています。

つまり、LJLにはLoLというゲームを介さない、またはそれをメインとせずとも誘引できるだけのコンテンツ力があるということです。

ところで、これまた前回の記事で書いた通り、2016年にはLJL UNLOCKED、2017年にはLJL DRAFT QUIZという映像コンテンツがありました。

www.youtube.com


こういった、LJLを詳しく知らなくても(極端に言えば、LoLを全く知らなくても)楽しめるコンテンツを用意することがLJLに関心(興味)を持たせるのに必要なもののひとつです。

というわけで、ありきたりではありますが、既存のチームや選手に密着した動画を制作するのは非常に有力な一手となりえるのではないでしょうか。

その動画では、どの選手が何のチャンピオンが得意かなどといった情報は一切不要です。好きな食べ物や生活様式、そして人となりが分かるような動画こそが、LJLを全く知らない人間を誘引するんですから。

加えて、それなりのコストがかけられるのであれば、かつてEvi選手がRampage所属時代に密着取材を受け、BSジャパンで放送されたドキュメンタリーのような形式をとっても面白いでしょうね。

(2)(選手のストーリーも含め、)LoL以外に関心の軸をずらす

将棋業界が人口減少の歯止め・若年層の取り込みのために開催した将棋電王戦においては、「将棋そのもの」ではなく「人間 vs AI」を前面に押し出し、若者向けのプロモーションに成功しました。この方法をLJLでも採用するのはどうでしょうか。

例えばMSIやWCSといった世界大会。よくあるコンテンツではありますが、それだけ「国・地域の対抗戦」というのはLoLを知らない人を誘引する強力な武器の一つになりえます。

世界戦でLJLと因縁が深い相手として1チーム挙げるとすれば、オセアニア(OPL)のDire Wolvesがあります。残念ながら今Splitにおいてはプレイオフで敗れ、WCSへの出場は叶いませんでしたが、彼らは古くから頻繁にLJLへtrash talkを仕掛けてきました。

実力も十分にあり、LJL代表とは幾度となく世界大会で相まみえた実績がある等、ライバルと呼ぶに不足ない関係でしょう。

 



まだWCSで戦う可能性があるところで言えば、LECのMAD Lionsもそうでしょう。

昨年はSplyceというチーム名でWCSに出場していたMAD相手に、LJL代表のDFMは完勝と言える戦いぶりでLJLの対メジャーリージョン初勝利を挙げました。そういったところでも「日本 vs EU」という構図が作れそうです。

 


4.Action(行動):実際に観戦し、リピーターとなってもらうには

(1)有利・不利の可視化技術を有効活用する

前回の記事でも触れたとおり、LJLには既に有利・不利の可視化技術があります。それがiBlitzClank君。

最近は手首がちぎれそうなほど手の平を返すことで有名な彼ですが、現在は「ゲーム開始時、15分時点、20分時点等の節目のタイミングでしか表示されない」という弱点があります。

ゆえに、LJLの解説が分からない人には「今現在、どちらが有利なのか」が分からないのが現状です(解説で十分だろうという突っ込みには前回触れていますので、そちらを読んでください。簡単に言うと、LJLの解説はある程度LoLが分かっている人向けのものだという話です)

そこで、iBlitzClank君の常時表示をしてみるのはどうでしょうか。

リプレイ表示時等の例外を除き、原則的に常時表示とすることで、それこそ「ネクサスを割ったら勝ち」くらいの事しか知らない視聴者でも楽しめるコンテンツとしての土台が作りやすくなります。

現在のiBlitzClank君は(観客として見えている範囲では)少なくとも2分ごとにデータを取っているように見えます。その頻度を増やすことは、おそらくマシンパワーを増強するコスト程度での実現が可能で、割とすぐに適用できる施策ではないでしょうか。

(2)初めての視聴者が観戦しやすい土壌を作る

例えばTwitchにおけるチャット欄。

現在のTwitchチャット欄は、お世辞にも品の良いものではありません。

これを「統制」という形で治める(平たく言うとモデレーター権限でBANする)のではなく「文化」という形で昇華することで観戦しやすい土壌を作ることも、新規勢に観戦・リピーターとなってもらうには必要な作業と思います。

「それをTwitchのキッズたちに求めるのは……」という諦めは筋違いでしょう。実は実際に一部は出来ているんですから。

出前館のCMが流れれば「サンキューハマタ」とコメントを打ち、(少し古いですが)TFTモバイルのCMが流れれば「エイッwwwティーエフティーモバイルwwwドゥドゥドゥンジャwwwドゥロロロwwwゲレクシwwwドゥドゥドゥンジャエイッwwwティーエフティーモバイルwwwドゥドゥドゥンジャwwwドゥロロロwwwゲレクシwwwドゥドゥドゥンジャwww」と長文を繰り出すのは視聴者発祥の「文化」です。

これを公式側が作り出せるようになればいいのです。(正確に言えば、作り出せるような素材を提供できればいいのです)

但し、この「文化」を作るというのは非常にコスト(時間)がかかります(そういう意味では、アイデアとしてふさわしくないのかも)。

一朝一夕で作り上げられない(そして、公式側だけでは絶対に作り出せない。それをやると「統制」になってしまう)がゆえに、なるべく早く、そして持続的に実施していく必要があろうかと思います。

 

5.おわりに

今回は「仮に私が運営側の人間だったら」という仮定的な立場に立って、LJLの人口増加に寄与できるアイデアを考えてみました。

おそらくこのブログ記事が運営の方に読まれることは無いでしょう。だからといって、無意味な記事になったとは思っていません。

私の中で改めて「LJLが好きな人を増やすには」という考えを整理するとても良い機会になりましたし、更には今回整理した内容をいちプレイヤー、いち視聴者として応用することもできるからです。

応用方法としては、友人にLJLを紹介するときに「ゲームの内容」ではなく「選手の紹介」から入るのも良いでしょう。チャット欄で自らミームづくりに挑戦するのも悪くありません。

それぞれが「少し面白いこと」をできれば、今よりLJLが「少し面白くなる」かもしれませんから。

(文:あきのあまき)

*1:大昔に提唱されたモデルゆえに古風すぎ、AISASやSIPSモデルの方が適切という突っ込みもありそうですが、分かりやすさ重視です