あきののろるにっき

League of Legends(LoL)に関するさまざまなことを記事にしていきます。 twitterは@AkinoAmaki_LoL

【あきののろるにっき#33】プレイインステージを貫いた閃光、PSG Talonの輝きとPCS地域の団結力

先日、プレイインのグループステージが終了した。

今年はコロナ禍の影響でベトナム地域の2チームが参加できず、結果として10チームが2グループ(グループA,グループB)に分かれて戦う変則方式だったが、両グループでタイブレークが発生する等、例年以上に熾烈を極めた争いとなったところだ。

LJLの代表として世界の舞台へ乗り込んだV3は、初戦にRainbow7(ラテンアメリカ)から勝ち星を奪う爪痕は残したものの、最終的には1勝4敗でグループステージ敗退が決定してしまった。

ただそんな中でも、ただ消極的にやられるばかりでなく、自分達からアイデアを出して積極的に仕掛けていく姿勢を最後まで忘れずに戦った点はしっかりと心に留めておくべきだろう。

選手へは、敢闘への感謝とねぎらいの言葉を伝えたい。

 

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Twitchの公式配信(https://www.twitch.tv/videos/752438955)より

 

さて、上述した通り、今年のプレイイングループステージは波乱の幕開けとなった。

開幕前の前評判では上位独占が固いであろうと言われていた、メインリージョンから出場のTeam Liquid(北米)、MAD Lions(ヨーロッパ)、LGD Gaming(中国)。

そのうち、TLだけは(昨年のMSI準優勝の意地か)さすがの貫禄を見せてグループAの首位を守ったが、他の2チームは悲惨な幕開けとなってしまった。

まずは初日からLGDに黒星。2日目には調子が戻らないLGDに加えてMADまでマイナーリージョンに敗北。あわや両チームとも最下位、プレイイン落ちの寸前まで味わい、最終結果も両チームとも4位でのフィニッシュとなった。

これも「WCSの魔物」か、総じて多くのチームが安定したパフォーマンスを発揮しきれない4日間となったと言っていいだろう。

中でも、下馬評で「一番パフォーマンスが安定しないであろう」と思われていたのは、PCS(台湾・香港・マカオおよびベトナムを除く東南アジア地域)代表のPSG Talon
なにせこのチーム、プレイインステージ中はメインロースター5人のうち最大で3人が急遽集められた助っ人で固められていたのだ。

しかしそんな危機的状況の中でもチームを立て直した彼らは前評判などどこ吹く風、グループBを1位抜けし、最速でグループステージへの切符を手にした。

今回は、このPSGに降りかかった災難とそれを救ったPCS地域の団結に目を向けてみたい。

 

【目次】

 

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Twitchの公式配信(https://www.twitch.tv/videos/752438955)より

 

 1.PSGに降りかかった災難

WCSへの出場権を獲得したPSGがコロナ禍で混乱する世界の中で受けた災難は、出場断念を余儀なくされたVCS(ベトナム)の2チームの次に悲惨なものだった。

具体的には、JGのRiver選手とMidのTank選手がコロナ禍に伴う自己隔離期間の都合によりプレイインステージへ参加が不可能となり、ADCのUnified選手も同様の理由でプレイインの2日目まで参加が不可能となったのだ。

(なお、River選手はまさに今年WCSに出場していたV3 Esportsにかつて所属し、2019年のSummerシーズンにJGを務めていた名プレイヤー(LJLではBabyという名前で登録)。2018年にはBowQen Blackbucksに所属しLJL CSから昇格戦に挑戦する等、LJLとのかかわりが深い選手だ)

これによりPSGは大きなロースター変更を余儀なくされた。

JG-Mid間やADC-Sup間の連携力が非常に重要なプロシーンにおいて、JG-Mid-ADCの3選手が抜けるという事実は非常に重い。連携力の弱体化は、将棋で言うところの「飛車落ち」に近いほど致命的だ。

 

2.PCS地域の団結

この受難を受け、PSGは以下の発表を行った。

  • ahq eSports Club(直近のシーズンでPCS地域4位)からUniboy選手とKongyue選手が代理加入
  • Machi Esports(直近のシーズンでPCS地域1位)のアカデミーチームにおいてADCの経験があり、現在はMachiのコーチを務めるDee選手が代理加入
  • いずれの代理もコロナ禍の隔離期間中のみとし、終了次第ロースターを戻す

 

8月末に行われたPCSの決勝戦からわずかな短期間でこれらのロースター変更が可能となった背景には、PSGが所属するPCS地域の他チームによる助力があった。

JG-MidラインにKongyue選手とUniboy選手を拠出したahq、ADCに現役のコーチであるDee選手を拠出したMachiはもちろん、往年の名門チーム(現在は解散済)であるFlash Wolvesの助けがあったことが上述のPSGの公式声明により明かされている。

 

なお、Bigfafa監督のインタビューによると、やはり選手探しには非常に苦労したようだ。

中でもADCのDee選手は「(Riotから課された条件である)直近1年間にプロ活動を行っていないアマチュア」かつ「24時間以内に見つかる」という非常に厳しい2つの条件の中で探し出した選手だそうで、あまりの苦労、あまりの悲運に胸が締め付けられる思いだ(なお、仮にアマチュア選手という制限が無ければ、後述する二人と同じくahqに所属するWako選手が候補に挙がっていたようだ)。

 

ちなみに、JGを務めたKongyue選手は昨年にBigfafa監督がPSGに勧誘していた選手で、結果としてahqへ移籍してしまったものの、その後も親交を続けていたことが今回の助力につながったとのこと。

また、Uniboy選手もシーズン終了後で疲労がたまっているにもかかわらず、チームに積極的に溶け込もうとする責任感のある選手だったようだ。
(詳細は以下の記事を参照されたい)

www.fomos.kr

www.fomos.kr



PSGにとって不幸中の幸いであったのは、連携が重要なJG-Midを、同チームの(しかもWCSを経験したことのある)選手で固められたこと、そして代理でロースター登録した3名が台湾出身であり、ロースター全員を同じ言語圏の選手にできたことだ。

「連携力」というプロシーンにおいて非常に重要な要素におけるリスクを少しでも減らす要因となるこれらのプラス材料は、彼らにとって希望の灯であったことだろう。

とはいえ、勿論これだけでは本来のパフォーマンスに及ぶべくもなく、あくまで小さな灯火でしかない。しかし、そんな状況下であってもPSGは決して腐らなかった。

チーム力不足で受け身になるなどということはなく、むしろ代理加入したKongyue選手とUniboy選手による苛烈な連携力・チームファイト力を活かし、灯火どころかまばゆい閃光の様に他チームを圧倒したのだ。

 

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Twitchの公式配信(https://www.twitch.tv/videos/752438955)より

 

3.グループステージ以降のPSG

ここまで苦労続きだった彼らにとって一つだけ救われる点があるとすれば、プレイインステージを異例のロースターで戦ってきたことで、グループステージで戦うライバルたちに自らの手の内を隠せたことだろう。

そう、彼らはついに、River選手とTank選手を加えた以下のロースターで、グループステージに集う強豪チームたちとの熾烈な戦いに挑む。

  • Top Hanabi
  • JG   River
  • Mid Tank
  • ADC Unified
  • Sup Kaiwing

プロシーンにおいて「飛車落ち」の状況であっても目覚ましい安定性を見せ、輝かしい成績を残してくれたPSG Talon

そんな彼らの全開パフォーマンスをいよいよ見られることが本当に楽しみでならない。

最後になるが、この「フルスペック」PSG Talonを見られるのは、急な事態にもかかわらず迅速に手を差し伸べてくれたahq、Machi、そしてFlash Wolvesの3チーム、そして何より代理出場の決意を固めてくれたKongyue選手、Uniboy選手、Dee選手の3名のおかげだ。

心からお礼を言いたい。本当にありがとう。

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Twitchの公式配信(https://www.twitch.tv/videos/752438955)より

 

(文:あきのあまき)

【あきののろるにっき#32】"Take Over"の街に出てくる小ネタを拾えるだけ拾ってみた

こんにちは、あきのです。

本日午前0時、ついにWCS2020のミュージックビデオ"Take Over"が公開されましたね。

 

www.youtube.com

 

街を颯爽と駆け抜ける男女。そのうち、男の前に謎のブロッコリー男が立ち、PCへと導く。

そして男は歴代のWCSチャンピオンたちを乗り越え、力を引き継いで(Take Overして)、ついにWCSの舞台へ……!

 

とても良いMVでした。

特に私にとって好印象だったのは、(毎年の事ではあるのですが)MVの中にちりばめられた小ネタの数々。

今回の記事では、特に街中に絞ってどのようなものが隠されていたのかを明かしていきたいと思います。

なお、以下の小ネタは、中国語ネイティブでない私がMVを眺めながら気づいたものの列挙です。なので、見落としや翻訳ミス、表現が適切でないものが含まれている可能性がありますが、予めご了承ください。

 

 

1.動画内時間00:02

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①ドラゴンピットバー

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②アイバーン農場

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③ACEコーヒー

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④めそめそミイラの呪い

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⑤王者ルブランのスキン画像

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2.動画内時間00:04

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スポンサーであるOPPOのロゴ

 

3.動画内時間00:06

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スポンサーであるOPPOのロゴ

 

4.動画内時間00:10

【1枚目】

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①レーンロードエクスプレス

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 【2枚目】

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①イレリアの飛刃の舞スタジオ
②アイバーンの生鮮食品店

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③青バフのトレーニングジム

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④メンタルブーム歯科

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【3枚目】

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①ザイラの植物店

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②ブラインドピック視力検査室

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【4枚目】

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車のナンバーがエズリアル

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5.動画内時間00:11

【1枚目】

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クイックキャスト道具店

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②メンタルブーム歯科

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【2枚目】 

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 スプリットプッシュフィットネス

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【3枚目】

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①ニーコのディスカウントショップ(服飾店)

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②ポロスナック

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【4枚目】 

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①看板にジンクス

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②看板にティー

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③赤バフ火鍋店

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④タリック宝石店

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【5枚目】 

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車のナンバーがヤスオ

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6.動画内時間00:13

 

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①車のナンバーがレンガー

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②車のナンバーがブラウム

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③車のナンバーがルブラン

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④車のナンバーがグラガス

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⑤バスがWCS決勝戦の会場行きとなっている

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ミニオンウェーブ管理有限会社

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7.動画内時間00:19

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①ブーツ

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②サモナーの肝臓爆発トレーニングジム

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8.動画内時間00:24

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①ケイトリンの消耗品店

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②シヴィアのピザデリバリー店

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9.動画内時間00:29

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①Faker選手の二つ名
②スポンサーのエイリアンウェアのロゴ

 

10.動画内時間00:38

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 ①スポンサーのSECRET LABのロゴ

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②スポンサーのΩMEGAのロゴ

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(文:あきのあまき)

【あきののろるにっき#31】スキンの世界を楽しもう! ~その2~

こんにちは、あきのです。

WCSのドローショウ(組み合わせ抽選)、観ましたか?

V3と当たるのはLGD(中国)、PSG(台湾、香港、マカオ及び東南アジア)、UOL(ロシアを含む独立国家共同体)、R7(ラテンアメリカ)といずれも強豪ばかりですが、是非強敵たちを撃破し、輝かしいグループステージの舞台に上がってほしいですね。

 

さて今回は前々回に引き続き、スキンの世界を楽しもう!というわけで、設定が面白いスキンシリーズを3つほど見繕ってみました。

特に最後に紹介している「リフトクエスト」シリーズは、とても面白いシリーズであるにもかかわらず意外と知っている人は少ないのではないでしょうか?

今回も、お気に入りのチャンプで興味深いスキンがあれば是非購入して使ってあげてくださいね。

それでは始めていきましょう!

 

 

 

 

1.わんにゃん対決シリーズ

2019年のエイプリルフールネタ、「犬vs猫」イベントで実装されたスキンシリーズ(一部例外あり)。

犬が空を飛び、猫が自ら爪研ぎタワーになる。世界はそうやって回っているのだ。

(1)コーキ(コーギーコーキ)

コーキは犬の航空力学に関するアイデアを持つドッグトレーナー。

もはや意味が分からないが、そんな彼は、空飛ぶコーギーと共にとりあえずペットショーに参加したのであった。

 

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(2)フィズ(フィヌ(フィヌ プレステージエディション))

2本脚で立つ、ごく普通のコッカー・スパニエル。

犬のクセにテニスボール拾い棒で歩行者を小突き回し、巨大な犬を召喚する。

これをおかしいと思う方がおかしい。だって、彼はごく普通の犬なのだから。

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(3)マオカイ(ミャオカイ)

猫になった木。巨大な体躯を誇る爪研ぎタワーとしての役割を受け入れた彼だが、その体で研ぐのは他人(他猫)のツメか、はたまた自分のツメか。

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(4)ヨリック(ミャオリック)

高級ペットショップ「フォーセイクンアイル」からやってきた、ごくごく普通の紳士。

繰り返すがごくごく普通の紳士であって、単に猫が好きだからコスプレしているだけだ。

そんな彼は常にたくさんの猫に囲まれて、猫の秘められし力を呼び出すことができる、

そんな普通の紳士である。

 

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(5)レンガー(レンニャー)

ナイフを持つ猫。かわいい猫ほど恐ろしいものはいない。

 

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2.アークライトシリーズ

アークライトと呼ばれる神秘の光をテーマにしたシリーズ。

ヴェル=コズを中心とした世界観であり一見明るそうな雰囲気に見受けられるが、その実、中身はダークファンタジーの仕上がりとなっている。

(1)ヴェル=コズ(アークライト ヴェル=コズ)

生命エネルギーの具現化した至高の存在であるヴェル=コズ。

伝説や神話にも登場する彼は千年に一度だけ定命の世界に降り立ち、自らの意思を遂行する価値のある者を選び出し、力を与える。

そしてヴェル=コズに力を与えられた者は、アークライトとして生まれ変わるのだ。

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(2)ブランド(アークライト ブランド)

人間に文化が芽生えて間もないころに力を授けられた最初のアークライト。

千年の年月が流れ、当人は遥か昔に死亡しているが、力を授けられる前のキーガン・ローデという名すら捨てた彼は、その光の力により苦しみと怒りのみに突き動かされている。

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(3)ヴェイン(アークライト ヴェイン)

アークライトの力を手にした彼女は、ヴェル=コズにより世界の底にうごめく暗闇の存在を見せつけられた。

その時、彼女の運命は全てを犠牲にしてでも闇を討伐するよう宿命づけられたのであった。

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(4)ヨリック(アークライト ヨリック)

アークライトにより力と永遠の命を授かり、かつては偉大な王として君臨していたが、ヴェル=コズの意思の執行者となるべく王国を去った。

そして数百年後に帰還した彼を待っていたのは、埃と瓦礫の廃墟となった王国”だったもの”。そして彼は狂気に飲み込まれた。

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(5)ヴァルス(アークライト ヴァルス)

アークライトの力により、知識をはるかに超えた悠久なる宇宙との一体感に満たされたヴァルス。

その類まれなる知能によって戦争の火種を回避させる等、宇宙的調和の執行者として活躍している。

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3.リフトクエストシリーズ

テーブルトークRPG(TRPG)「リフトクエスト」をテーマにしたスキンシリーズ。

プレイヤーとしての登場は勿論、ゲーム内の役職やNPC、そして可愛らしいラスボスまでもがスキン化されており、数が非常に豊富。また、それぞれの設定が比較的よく練られているのも特徴。

(1)ライズ(白ひげライズ)

ルーン探求の旅から一息ついて、テーブルトークRPG「リフトクエスト」をプレイすることにしたライズ。ライズ、グラガス、ヴァルス、ブラウムの4人パーティだ。

そんな彼は、ゲームの中でも魔法使いの役割を演じている。

唯一現実と異なる点は、ゲームの中の彼のひげは白く、そして帽子をかぶっていることだ。

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(2)タル割り公グラガス

人によって「敬虔な太陽を信仰する聖職者」とも「卑しむべき飲んだくれ」とも評される、なんとも評価しづらい彼。

「リフトクエスト」にはあまり詳しくないが、ドラゴンと戦う事、そして戦闘中に酔いつぶれることは大好きだ。

……評価は定まったかもしれない。

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(3)ヴァルス(閃弓ヴァルス)

現実では悪い怪物に二人の弓手が一人として生きる運命を背負わされた彼だが、何故か「リフトクエスト」の中では呪いを受けた一人の弓手としてロールプレイしている。

あまり馴染みが無いからか、彼にとってTRPGはノクサス人退治よりはるかに難しい。

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(4)ブラウム獅子心王ラウム

世界一強くて勇敢な戦士である獅子心王ラウムとその冒険の物語は世界中の人々に愛されている。

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(5)サイオン(バーバリアン サイオン)

どれだけTRPG仲間に「やめろ」と言われても、常に野蛮人のキャラクターを選択し、そしてゲーム開始直後に倒されるサイオン。もはや参加する災害。

もはやTRPGをプレイしているというよりはひたすらキャラを作成しているだけだが、そのキャラ作成の説明欄には常にこう書かれている。――”野蛮人である”

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(6)バード(吟遊詩人バード)

「リフトクエスト」の中でも圧倒的不人気、吟遊詩人職でプレイしているバードは、古代の歌唱技術を恐ろしい死の武器へと変化させた。

そんな彼の大きな弱点は、時間の概念が一般人と違いすぎる事。そして何より致命的なのは「ブーン」という奇妙な音でしか話せない事。

一緒に卓を囲むときは、彼の1ターンが永遠に等しい時間がかかることを覚悟しておこう。

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(7)ヌヌ&ウィルンプ(破壊のヌヌ&ウィルンプ)

国のあちこちで行われる激しい戦いに傭兵として参加する彼ら。

その見た目からはわからないかもしれないが、いつでも敵の顔面に笛を突き刺す用意ができている。

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(8)カーサス(破滅の光カーサス)

闇の魔法使いであり、高レベルのスペルキャスターである彼。

ただし、仲間たちは常に気を付けなければならない。彼の裏切りを。

「リフトクエストでは仲間を裏切ってはならない」というルールは存在しないのだから。

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(9)モルデカイザー(冥王モルデカイザー)

「リフトクエスト」の拡張パックで正式実装された新クラス「ダークパラディン」。

あまりに強すぎるからバンすべきと主張する向きもあるとかないとか。

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(10)ジェイス(ブライトハンマー ジェイス)

科学技術をマスターした高貴なるパラディン

どんなクリーチャーもかなわない、とても頼りになる彼だが、ゲームマスターよりも優位に立とうとするのが玉に瑕。そんなわけで、弱点はルールブックの抜け道。

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(11)トゥイッチ(トゥイッチ シャドウフット)

ゲーム内でも一緒にテーブルを囲んでも不快な存在であるトゥイッチ シャドウフット。

一応彼はトゥイッチ・タロン・タリックの3人でパーティを組んでいるが、可愛らしい見た目から繰り出されるクソムーブは常軌を逸しており、毎ターンの様に仲間の装備を盗み、彼を「トイレ王国」から失脚させようとする意味不明な陰謀についてつぶやき続けている。

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(12)タロン(タロン ブラックウッド)

トゥイッチ シャドウフットとマブダチ。熱血漢で非凡なアサシンである彼は、パーティ内で唯一の上位クラスキャラクターでもある。悲しい過去を背負うダークエルフアンチヒーローであったり、いつか世界を救う運命にあるかもしれないが、多分陽気すぎて色々抜けている。

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(13)タリック(タリック ルーミンシールド)

トゥイッチ、タロンと共に「リフトクエスト」をプレイする、パーティ唯一の良心。

彼らトリオが全滅を回避できている唯一の理由。

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(14)ガレン(さすらいの剣士ガレン)

ラウムが「リフトクエスト」のために作った戦士キャラ。

通称「ハンサム・ガレン」として知られている。

そんな設定をガレン自身が気に入って、結局自分が使うことにしたのであった。

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(15)セジュアニ(暁の追撃者セジュアニ)

太古のライオンに跨っては戦闘の真っただ中に飛び込んでいく彼女は非常に恐ろしい敵だが、あまりに慎重さが足りないことで有名。その証拠に、絶滅種であるはずの太古のライオンは現在早くも四代目である。

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(16)ベイガー(賢者ベイガー)

「リフトクエスト」の冒険初期に出会う、胡散臭すぎるほど親切な魔法使い。

彼こそがこのゲームのラスボスなのはあまりにも有名な事実だが、新規プレイヤーへのネタバレだけは避けよう。

というわけで、ここに書いてあることも忘れよう。

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(文:あきのあまき)

【あきののろるにっき#30】LJL 2020 Summer Finals ドラフトの裏に見えた、両チームの見えない攻防。

こんにちは、あきのです。

長かったような短かったような、ついにLJL 2020 Summer Splitが閉幕してしまいましたね。

DFMが2018年のSummer Splitから護り続けてきた王座がついに陥落。

そして、新たなナンバーワンに輝いたのはV3 Esportsでした。

 

かつては国内で栄光に輝きながらも、2018年のSpring以降は優勝から遠ざかっていたPaz選手。

台湾の名門Flash Wolvesから移籍し、チームを引っ張ろうとするあまり春には突出することも多かったBugi選手。

短い期間ながらもDFMでSubとして過ごし、Ceros選手の背中を見ていたAce選手。

今期からのプロデビューで、右も左もわからない中で初めての経験に苦労していたArcher選手。

そしてAKIHABARA ENCOUNTで2018年にLJL CSデビューして以来、日陰を歩むことが多く、時には選手ではないと間違えられることすらあったRaina選手。

 

様々な苦しみを乗り越え、Hw4ngコーチ、SONコーチ、そしてフロント陣と共に遂に日本一の栄光を掴んだ彼ら。

彼らとDFMのドラフトは、まさに目に見えない干戈の交わりでした。

BO5のラスト、行きつくところまで行った全5ゲーム。

今回は、その中でも特に応酬の激しかったGame1、Game4、Game5のドラフトについて、互いのコーチによるドラフト勝負という不可視の刃での斬り合いがどのように行われていたのかを推察していきたいと思います。

 

 

 

1.Game1

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LJL公式放送より(https://www.twitch.tv/videos/732953008)。以下全て同じ


(1)ファーストバンフェーズ

①V3 Esports

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1バン目のハイマーディンガーはCeros選手のターゲットバン。

ハイマーディンガーはそもそも使い手が非常に稀少なうえ、チーム単位でMid運用しているところとなるとDFMを除いて皆無であるため、対策が非常に打ちづらいチャンピオンです。

ゆえに、情報の非対称性という側面でMidレーンでの不利を確定させたくないのであればバンが安定の選択肢となります。

3バン目のレオナはGaeng選手のターゲットバン。

Gaeng選手の場合はレオナをバンしてもバード、ノーチラス、(少しTierが下がって)ラカンでもエンゲージが十分可能であるため、単体では効果の薄いバンとなっていますが、仮にバードやノーチラスであれば後述するパンテオンでレーンから圧力をかけていく狙いを持っていることから、十分な殴り合いをしてくるレオナを封じたい狙いがあったのでしょう。

2バン目のレネクトンは少し複雑です。

可能であればV3は自身でレネクトンを使いたいですが、ファーストピックで取ってしまうとEvi選手に得意ピックのナーを当てられてしまいます。かといって逆にファーストピックで取らないとEvi選手に取られ、レーンをドミネートされてしまう。この非対称性から、V3としてはバンせざるをえない状況だったと思われます。

②DetonatioN FocusMe

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1バン目のガリオはAce選手へのターゲットバン。

Ace選手はレギュラーシーズンでガリオを使い、類まれなパフォーマンスをたたき出しています。使えばレギュラーシーズン必勝(5勝0敗)、バンされた回数はレギュラーシーズン+プレイオフの23ゲーム中14ゲームというとんでもない成績。

2バン目のセトは、4レーンフレックス(Bugi選手の役割的に使うかは疑問ですから実質3レーンですが)というのもありますが、なによりもRaina選手のターゲットバンでしょう。

こちらも使えばレギュラーシーズン必勝(4勝0敗)、バンされた回数はレギュラーシーズン+プレイオフの23ゲーム中10ゲームという成績です。

3バン目のケイトリンは、現パッチにおけるADCのダントツTier1。ファーストピックの権利が無いレッドサイドのDFMとしてはバンも仕方のないところです。

 

(2)ファーストローテーション

 

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期待されたGame1のファーストピック。V3は準備してきたチャンピオン、パンテオンをピックしました。

パンテオンはTop,JG,Mid,Supの4レーンフレックスであり、序盤から強く、なおかつADダメージディーラーである彼をTopやMidをちらつかせることでJGにTierの高いリリアを自然に置きやすくなるという、現パッチに非常に合ったチャンピオンです。

対するDFMは先出しで安定するADCのセナと、V3のBugiの影響力を削ぐことを狙ってファーム系JGのニダリー。

それを見たV3は、Bugiキャリーが実現できるチャンプ、リリア。リリアは前述の通りパンテオンと相性が良いことに加え、ニダリーに中立クリープを奪われない速度でジャングリングすることができると共に1v1でも負けづらく、更にはLv6以降にエンゲージもダメージディーラーも担えるという良いことづくめのTier1ジャングラーです。

加えてV3は、Archer選手の得意ピックであり、UltによるエンゲージとEの視界確保によって序盤の安定性を確保できるアッシュを選択。

DFMは最後にCeros選手であればMid先出しでも安定する得意チャンプのニーコをピックし、ファーストローテーションを終えました。

(3)セカンドバンフェーズ

①V3 Esports

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さて、みなさんもご存じの通り、V3はFinalsに赴くにあたり、Topサイオンという秘策を用意していました。

ファーストローテーションが終了した時点で、DFMのキャリーはMidニーコ、ADCセナでほぼ確定。キャリー二人がDPSに乏しいため、育ったサイオンがどうやっても溶かせませんからピックのチャンスです。

DFMとしては、サイオンの影響力を削ぐにはTopにカウンターピックを当て、レーンをへこませて集団戦で仕事をさせないことが一番です。ゆえに、V3はそれの防止を目的として、サイオンを一方的に殴ることができ、Evi選手の得意チャンプでもあるナーをバンしました。

2バン目のラカンバンの狙いですが、まず、後述の通りDFMがスレッシュとノーチラスをバンしたことからSupでエンゲージ可能なチャンピオンはラカンとバードに限られます。

そして、(このシリーズを通して言えることですが、)V3はDFMのGaeng選手になるべくバードかラカンの選択を迫りつつ、Game5で説明する例外を除いてバードを強制させる方針を持っていました。

以上から、バードを使わせるためにラカンをバンしたのでした。

②DetonatioN FocusMe

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DFMはパンテオンをSupに寄せることを目的としてスレッシュとノーチラスをバン。

これで、ソロレーンにパンテオンを置かれた際のパンテオン-リリアのキルプレッシャーを緩和しつつ、V3のTopにタンクを置かせる腹積もりです。

(4)セカンドローテーション

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DFMは、タンク同士の殴り合いならパッチ10.16でシールドが強化されているシェンが有利とみてピック。ニーコのUltにUltを合わせることで、エンゲージ・ディスエンゲージを強化できるというのも強みの一つでしょう。

このシェンピックは、おそらくV3のTopピックをオーンと読んでのことではないでしょうか。

しかしV3がAceの得意チャンプ、ルブランと共に選択したのはサイオン。そしてこのピックがゲームの帰趨を決定付けました。

ラストピックでDFMはTop運用予定であったシェンをSupに送り、カミールをピックしてサイオンの影響力を削ぐことも考えましたが、最終的にはエンゲージ不足を憂慮してかSupにバードをピック。

これではサイオンを溶かすビジョンが見えないため、ゲームの中ではセナが脅威アイテムを積み、サイオンを無視してV3のキャリーラインを先に溶かす作戦に出ましたが、最終的にはPaz選手の巧みなサイオンさばきによって集団戦でのエンゲージを許してしまいました。

結果、どう頑張っても落ちない要塞を前に屈したDFMが1ゲーム目を落とすことに。

このゲームは、まさしく準備してきたピックをいかんなく発揮したV3のドラフトが輝いたと言えるでしょう。

  

2.Game4

個人的にはこのGame4が一番白熱したドラフトだったと思います。

1-2のビハインド、優勝までに逆リーチをかけられた状態でこのGame4を迎えたV3は、ドラフトの内容を大きく変えてきました。

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(1)ファーストバンフェーズ

①DetonatioN FocusMe

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Game1と同じくAce選手のガリオ、Raina選手のセトをバン。

DFMはGame1をレッドサイドで迎えたため、OPチャンプのケイトリンを残る1枠で消していましたが、今回はブルーサイドなのでバン不要。

レッドサイドのV3がバンしなければファーストピックで取れるため、代わりに1ゲーム目を決定付けたサイオンをバンします。

②V3 Esports

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対するV3はCeros選手のハイマーディンガーバンは変わらないものの、Game2にオープンした結果暴れられてしまったGaeng選手のレオナ、そしてGame1からGame3まで終始エンゲージ・カウンターエンゲージの面でDFMにユーティリティをもたらし続けていたCeros選手のニーコをバンします。

これによりOPチャンプのケイトリンは開けてしまいますが、一方でGame1からGame3まで終始ドラフトのバン枠を占有し続けていたレネクトンを同時に開けられるというメリットも手に入れました。

(2)ファーストローテーション

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DFMは当然OPチャンプのケイトリンをピック。

対するV3は、敢えてオープンにしていたレネクトンをピック。前述の通りケイトリンとレネクトンを同時にオープンしたのはV3の作戦で、DFMがレネクトンを取ればこれ幸いとOPチャンプのケイトリンをピックし、DFMがケイトリンを取ればレネクトンを取る腹積もりでした。

ここのポイントは、V3としてDFMがファーストローテーションの残り2ピックでナーのピックを誘っていること。

以下、少しややこしいですが、V3としては、DFMに2,3ピック目のいずれかでニダリー(Bugi選手の得意チャンプ、かつレネクトンとの相性が非常に良い)のピックをほぼ強制しています。

よって、残り1枠にナーを使わせてしまえば、返しにリリア(Bugi選手ならエリスでも良いかもしれません)をピックし、次いでセカンドバンフェーズでケイトリンと相性の良いモルガナ、エンゲージの要となるラカンをバン、更には4ピック目でノーチラスを取り上げてしまえば、DFMにバードのピックを強制し、かつラストピックでMidのCeros選手にカウンターを当てるという道筋を描ける寸法です。

しかしDFMもさるもの。ここでのナーのピックはドラフト上の不利を背負うことにつながるため、Midを先出しでピック。おそらくここでピックしたかったのはニーコでしょうが、ファーストバンフェーズでバンされているためやむなくアジールに。
対するV3はルブランよりもリスクが低く、またAce選手の得意チャンプであるゾーイをピックしました。

(3)セカンドバンフェーズ

①DetonatioN FocusMe

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DFMはBugi選手の得意なキャリー系ジャングラーであるイブリン、そして、モルガナをバンされたことから、Bot Duoの安定性確保のためにキルポテンシャルの高いブリッツクランクをバンします。

②V3 Esports

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対するV3は困ったことになりました。DFMがMid先出しのデメリットと引き換えにTopレーンのピックを隠したことで、ケイトリンと非常に相性の良いモルガナ、そしてレネクトンがレーン戦でドミネートしにくいボリベア、ナーの3体のうち少なくとも1体をバン漏れさせてしまうことが確定したのです。

V3側がまだMidをピックしていなければ、レネクトンをMidに逃がして(Ace選手はレネクトンを使えます)のドラフトも考えられましたが、あいにく既にゾーイで確定済。

緊急手段としては、ボリベアとナーをバンし、モルガナを自分たちでピックするという方法もありますが、アッシュ-モルガナではレーン戦でのキルプレッシャーがそれほど強くなくDFMのBot Duoに対抗しづらい。

結果としてV3はモルガナとボリベアをバンし、泣く泣くDFMへとナーを明け渡すこととなりました。

(4)セカンドローテーション

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セカンドローテーションではV3がGame1,Game2に倣ってリリアをピック。

対するDFMはSupの選択肢としてバード、ラカン、ノーチラスの3体が候補に挙がるものの、V3のキャリーであるゾーイとアッシュに対するプレッシャーが大きく、かつケイトリンとの相性が良い(Ultで停止している足元にケイトリンの罠を設置することができる)バードをピック。

更に、満を持してEviの得意チャンプ、ナーをピックしました。

対するV3はラストピックにRainaの得意なフックチャンプであり、フロントラインを形成できるノーチラスをピックしました。 

 

3.Game5

BO5最後のゲーム。V3がSengoku Gaming戦とFinals Game1で仕込んでいた布石が、遂に花開きます。

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(1)ファーストバンフェーズ

①V3 Esports

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V3はCeros選手のハイマーディンガー、ニーコに加え、レネクトンをバン。

同サイドでのゲームだったGame1、Game3ではニーコに代えてレオナをバンし、ファーストピックでパンテオンを取ることで、序盤からのプレッシャー、構成とドラフトの柔軟性を確保していました(Game1の解説を参照)が、そのドラフトで挑戦したGame3に敗れたこと、及びCeros選手のニーコを止めることを優先し、バンを変更したのでしょう。

②DetonatioN FocusMe

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DFMは同サイドのGame1、Game3と変わらずAce選手のガリオ、Raina選手のセト、OPチャンプのケイトリンをバン。

(2)ファーストローテーション

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レオナを開けたV3はファーストピックでレオナを選択。ここで開けてしまうとDFMにみすみす渡すこととなるため、やむなしのピック。(Raina選手はSummerでのピック回数ゼロのため、おそらくチームとしてもあまり好きでないのでしょう)

対するDFMはBugi選手の影響力を削ぐためのニダリー、そしてセナよりも序盤のキルプレッシャーが高いジンを選択。

それを見たV3は、Game1で良いイメージがあり、1人で強固なフロントラインとファーストエンゲージを兼ねられるサイオンに加え、先出しとなるMidにはAce選手の得意チャンプであるゾーイを選択。

DFMはファーストローテーションのラストピックに、ゾーイと対峙しつつも(Game1の反省を踏まえて)レイトゲームでサイオンを溶かすことができるアジールをピックしました。

(3)セカンドバンフェーズ

①V3 Esports

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V3は徹底したGaeng封じに走ります。DFMにとってフレックスピックであり、Supportとして運用した場合序盤からアグレッシブなレーン戦が展開できるパンテオンをバン。

そしてGame5に来て初めてバードをバン。これまでは徹底してバードのピックをDFMに強制するドラフトを展開してきたV3ですが、Game5だけは事情が違います。自分たちでレオナをピック出来ているのです。

少しややこしい話になりますが、このパンテオンをバンした時点におけるDFMの有力なSup候補を見てみると、バード・ノーチラス・ラカンの3体。

しかし、ノーチラスではレオナとサイオンという強固なフロントライン2枚を乗り越えてV3のキャリーたるゾーイとアフェリオスへのエンゲージが難しいため、残るはバードとラカンの2体に限られます。

であれば、レオナで有利を取れるラカンを残すことでゲームを優位に進めることができるという考えで、V3は敢えてGame5だけバードをバンし、ラカンを強制したのでした。

②DetonatioN FocusMe

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対するDFMは、Bugi選手のピックをリリアとにらんで徹底したArcher選手潰しを狙います。

Archer選手が得意とするアッシュ・カリスタというTierの高いADCをバンし、ゲーム内での影響力を削ぐ狙いでしたが、しかし彼には切り札がありました。

(4)セカンドローテーション

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DFMはBotレーンでのキルプレッシャーを活かすため、味方を守ることのできるシェンをTopでピック。

対するV3はリリア、そしてアフェリオスをピックしました。

このアフェリオスピックによって、V3がSengoku Gaming戦とGame1で撒いていた布石、スワップ戦術が強烈に匂い立ちました。

詳しくない方のために説明すると、スワップ戦術とは通常ゲーム開始直後からBotレーンに送るADCとSupをTopレーンに送り込む作戦です。

ADC&Sup vs Topの1v2を強制することで、まさにアフェリオスのような序盤が弱いタイプのADCがレーン戦をスキップでき、安全にスケールできるようになるというのが長所です。

しかし、スワップ戦術を採用する際に注意すべきはTopレーンとBotレーンのタワーの固さの違い。

Topレーンのタワーはゲーム内時間が5分経過するまであらゆるダメージを半分にする効果を持っているため、互いにタワーを殴り合った場合、スワップしていない方のチームがタワーのプレートボーナスで優位に立つことになります。

そのため、スワップにあたっては相手ADCのタワーシージ能力の強弱が非常に重要になるのですが、DFMがピックしていたのはまさにタワーシージ能力が弱いジン。だからこそスワップ戦術が成立するのです。

そしてDFMが最後にピックしたSup、それはラカン

レオナというカウンター相手でもピックせざるを得ない、V3に誘導された、苦渋のピックでした。

 

この最終ゲーム、ここまで周到に準備を重ねたV3は見事にゲーム内できっちりスワップ戦術を成功させ、アフェリオスに安全にゴールドをかき集めました。

そしてゲーム内時間で20分を前にアフェリオスにインフィニティエッジ、ルナーンハリケーンを完成させ、見事にFinals優勝を決めたのでした。

 

4.おわりに

いかがだったでしょうか。

Finalsともあって、V3はRaina選手のパンテオン、Paz選手のサイオン、(今回紹介しきれませんでしたが)Ace選手のオリアナ等、様々な秘策を準備してきました。

それらを裏に隠しながら、SONコーチとKazuコーチの間で繰り広げられた見えない刃の応酬。

そのすごさの一端だけでも、この記事を通して伝わればとても嬉しいです。

 

(文:あきのあまき)

【あきののろるにっき#29】スキンの世界を楽しもう!

こんにちは、あきのです。

最近はRTA の視聴をお供に仕事をしています。調べてみたらLoLのRTAなんてジャンルもあるそうで、いつか挑戦してみたいですね。

さて今回は「スキンの世界を楽しもう!」と銘打って、独特の世界観を持つスキンシリーズをいくつかピックアップしてみました。

意外と知られていないかもしれませんが、スキンというのは「そのチャンピオンが別の世界にいたら」というifの姿を表したもので、中でも複数のチャンピオンが同一テーマのスキンを持っているスキンシリーズでは、世界観がかなり深く設定されているものもあったり。

今回はそんなスキンシリーズの中から一部をピックアップし、ご紹介したいと思います。

もしお気に入りのチャンプがいたら、これを機会に是非購入してみてくださいね。

 

  

1.K/DA

(1)世界観

地球を舞台に活躍する、アーリがリーダーを務めるK-POPユニット。

アーリとイブリンがリードボーカル、アカリがラッパー、カイ=サがダンサーを務め、世界中のファンを虜にしている。

そんなK/DAは、今後も世界ツアーで自分たちの音楽を世界中の人々に届けたいと願っている。

現実のユニットともコラボし、2018年のWorld Championshipでは決勝戦のオープニングにも出演した。

www.youtube.com

 


(2)登場するチャンピオン

アーリ

K/DAのリーダにしてリードシンガー。

かつてはティーンエイジ・ポップスターとして「可愛らしさ」を売りにしていたが、自分のイメージを拭い去るために一度業界を離れ、カムバックした現在はエレガントなセレブという立ち位置に。

K/DAのメンバーと一緒でないときは、ショッピングをしたりお茶を飲んだりといった一面も。

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イブリン

要求の厳しい歌姫として有名で、加入した音楽ユニットと袂を分かってきた過去も。

業界きっての「バッドガール」として有名だが、そのふるまいはあくまで自身を「タレントではなくアーティスト」と考えての結果であり、音楽に対する向き合い方は非常に真摯。

ちなみにチームの最年長。

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アカリ

チーム最年少ながら、総合格闘技に独自のワイルドなラップ・リリックのビートを組み合わせた独自のパフォーマンスにより確固たる地位を築いている、ユニットのラップ担当。

初心を忘れずリリックに磨きをかけるため、世界的な地位を築いた今でも定期的に路上でパフォーマンスを行っている。

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カイ=サ

2018年に香港の「キャン・ユー・ダンス」で優勝する等、若くして実績のあるリードダンサー。

アーリからは「K/DAのドリーマー」と呼ばれており、ユニットのリードダンサーとして活躍している。

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(3)小ネタ

アーリは香水の独自ブランドを持っている。そしてキツネらしく戌年生まれ

イブリンが影響を受けたアーティストはPentakill カーサス

アカリは日本語が話せる。そして格闘技道場の家に生まれついたので、鎌の使い方に秀でており、バク転も得意。

カイ=サは幼い頃からケープタウン、ソウル、ニューヨークなど計10ヵ国に住んだことがあり、K/DA加入前最も長く住んだのは香港。ちなみに好きな食べ物は四川風野菜炒め

 

2.バトルアカデミア

(1)世界観

中学卒業までは何の能力もなかったエズリアルは、とある恐ろしい脅威に遭遇したことで眠っていた潜在能力が目覚めた。

超人的な能力を持つ人間だけが入学できる有名校、デュランダルアカデミーに入学した彼は、先輩のジェイスやカタリナ、教師のグレイブスやユーミ校長、そして秘かに好意を寄せる相手、ラックスたちと共に研鑽を積んでいくのであった。

(2)登場するチャンピオン

エズリアル

アカデミー1年生。バトルクラブ所属。突如目覚めた能力をひっさげ、魑魅魍魎はびこるデュランダルアカデミーに殴り込んだ、将来の成長が楽しみな少年。

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ラックス

同じくアカデミー1年生(プレステージスキンでは2年生になっている)。ソーサリークラブ所属。新入生であるにもかかわらず、アカデミーの職員たちも驚かせるほどの魔力を持つ。

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ジェイス

デュランダルのイケメン担当。2年生。学級長にして、世界的に有名な「ルミナリークラブ」の代表。

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カタリナ

アカデミー2年生。アサシンクラブという、決闘で相手を殺すことを許可している唯一のクラブで筆頭メンバーを務める。

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グレイブス

デュランダルの軍隊に従軍していた元兵士。葉巻を咥えたままやる気がなさそうに授業をする。

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ユーミ

デュランダルアカデミーの校長先生。前の校長が二人連続で失踪したために、復帰まで代理を務めることになった猫。

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(3)小ネタ

グレイブスは元兵士で、教授になることは望んでいなかった。なので教えることも子供も嫌い。

ラックスの両親はデュランダルアカデミーで働いている。

ジェイスは自分の発明品シリーズ「ジェイスブランド」のラインナップを持っている。
カタリナの父(デュ・クートウ)は元校長で、現在は失踪している。

失踪した校長の後釜に据えられたユーミは、アカデミーの登記簿に魔法の力を籠めることで、世界を破壊するほどのエネルギーを発生させられる。

 

3.PROJECTシリーズ

(1)世界観

サイバーパンク世界線

そんな世界で企業戦争の最前線で非人道的な実験、そして己の野望のために人間の命を犠牲にする巨大企業「PROJECT」。

無理な身体拡張を施された結果、強大な力を得るのと引き換えに理性や記憶、精神が欠落してしまった者もいる。

その惨状を目の当たりにしたアッシュは、反乱組織G/NETICを率い、失敗作としてPROJECTから追放された人々や命からがら逃げだした流浪者達を保護し、ともに立ち上がった。

果たしてPROJECTは煩わしい反乱者どもを壊滅させることができるのか?
それともG/NETICは巨大企業の陰謀を阻止し、非人道的な振る舞いを世界からなくすことができるのか?

(2)登場するチャンピオン

マスター・イー

初期コンセプトモデルの一人。PROJECTに拘束されていたが、反乱組織のG/NETICによって解放された。

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ワーウィック

不可逆の強化改造を受けた結果、暴力により他者を圧倒するモンスター兵器に。

現在、PROJECTを逃げ出した彼は、無差別に暴れまわる恐怖の存在となっている。

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アッシュ

反乱軍であるG/NETICのリーダー。エコー等を見出し、巨大企業PROJECTに戦いを挑む。

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イレリア

元はゲリラとしてPROJECTに抵抗。のちにG/NETICに加わる。

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カタリナ

元はG/NETICの幹部だったが、アッシュと対立後にPROJECTに寝返り、下部組織のコマンドラインで暗躍中。

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ヴェイン

極秘技術による身体拡張を受け、成功。しかしPROJECT側の裏切りにより反乱。

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アカリ

最新の被験者。命からがら逃げ出し、反乱グループに加わる。

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レオナ

PROJECTきっての重装甲戦闘員。イオンチャージシールドによる盾で反乱者をブロック・スタンさせる。

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フィオラ

スピードに特化した身体拡張を受けている。G/NETICの一員で、ゼロパルス・ソードによる1v1が得意。

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ヤスオ

戦場から帰ってきたら身に覚えのない罪を着せられていた苦労人。G/NETICに加わり、プラズマコーティングを施したブレードを華麗に振り回す。

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ジン

身体拡張手術に失敗。悪名高い機会の殺し屋となってしまった。犠牲者から奪ったテクノロジーを埋め込んだことにより、人格に重度の断片化が生じている。

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ジンクス

自ら身体拡張手術に志願した変わり者。しかし、不運にも改造手術中に停電が発生、記憶が壊れサイコパスに。

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ルシアン

かつてPROJECTの下部組織、コマンドラインで活躍していたが、G/NETICに寝返り。イオンコア・ライトキャスター・ピストルを2挺ひっさげ、敵をなぎ倒す。

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ゼド

コマンドラインから昇格し、PROJECTの対スパイ部隊のリーダーに。影ではなく、微粒子投影機「ソリッド・スモーク」により分身を作り出す。

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エコー

下層セクター出身。アッシュによって見いだされた天才ハッカー

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ヴァイ

エコーと同じく下層セクター出身。用心棒をして生計を立てていたが、現在は町の平和を守る使者に。

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パイク

PROJECT初期のプロトタイプの一人。

あまりの不安定性に廃棄が決定され、解体されたが自己再生したツワモノ。

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(3)小ネタ

PROJECTが開発した初期コンセプトモデルはマスター・イーとパイク(他は現状不明)

カタリナが使う短剣の名前はハイパーエッジ・ダガー

ヴェインは極秘技術による身体拡張を受け、成功した珍しい個体。しかし反乱後、その極秘技術こそが自らの魂を縛り付けていることを知り、打ち破る手段を探している。

パイクはPROJECTによって破壊・解体・廃棄されたが、パイク自身の脳(サイバネティックブレイン)は周囲のスクラップを使って無理やり自己再生した。それがゆえに、スクラップに残ったいくつもの記憶がパイク自身のそれと混ざり合い、記憶が混濁している。

 

(文:あきのあまき)

【あきののろるにっき#28】隣の芝からLJLを考える(後編) ―将棋業界の施策について、LJLへの応用を考えてみる―

こんにちは、あきのあまきです。

今回は前回の記事(前編)の続きですので、いきなり本編からどうぞ。

 

 

1.前回のおさらい

前回の記事 では、LoLというゲームには初見で楽しめないという難点があることを課題として挙げたうえで、同じ苦しみを長らく味わってきた「将棋」が人口減少の歯止め・若年層の取り込みのために

  • 今どちらが有利かを可視化する技術を有効活用すること
  • 将棋そのものよりもプロ棋士が持つストーリーに焦点を当てたこと
  • 将棋人口増加のために『カジュアル層』の増加を受け入れたこと

などで一定の成功を収めたことを紹介しました。

そのうえで、今回の記事ではこれら将棋業界での施策をなるべく低コスト(費用・時間)でLJLに応用・適用し、観戦人口を増加させるアイデアとしてどのようなものがあるかを、あえて運営になりきって考えてみたいと思います。

そのために、まずは「人がどのようなプロセスで新たなモノに誘引される(今回の場合はLJLを観戦する)」のかを考えてみましょう。

 

2.AIDMAモデル ~人が対象を知り、購入するまでの心理状態~

AIDMAモデルとは人の5つの心理状態からなるモデルで、

  • Attention(認知):対象を知る
  • Interest(関心):対象に関心(興味)を持つ
  • Desire(欲求):対象が欲しいと思う
  • Memory(記憶):対象のことを記憶する
  • Action(行動):実際に購入する(可能であればリピーターとなる)

という「人が対象を知り、購入するまでの心理状態」を表したものです。*1

今回の記事の趣旨に沿って言い換えるのであれば、

  • Attention(認知):LJLの存在を知る
  • Interest(関心):LJLに関心(興味)を持つ
  • Desire(欲求):観戦したいと思う
  • Memory(記憶):LJLのことを記憶する
  • Action(行動):実際に観戦する(可能であればリピーターとなる)

となるでしょうか。

ここで言いたいことは、実際にLJLの観戦人口を増加させるには、上記の5つの心理状態をバランスよく喚起する必要があるという事です。

とはいえ全てを書くには記事が長くなりすぎてしまうので、今回は「Interest(関心):LJLに関心(興味)を持つ」「Action(行動):実際に観戦する」に絞って考えてみたいと思います。

 

3.Interest(関心):LJLに関心(興味)を持たせるには

(1)LJL(LoL)そのものよりも選手のストーリーに焦点を当てる

前回の記事で書いた通り、将棋には「観る将」という概念があります。

「観る将」は将棋をほとんど指さず、主にプロ棋士の対局を観戦する勢力なのですが、LoLにもサモナーズリフトやハウリングアビス等には行かずにLJLの観戦のみを行う層が一定数おり、(その割合はともかくとして)この点で両者は非常に似通っています。

つまり、LJLにはLoLというゲームを介さない、またはそれをメインとせずとも誘引できるだけのコンテンツ力があるということです。

ところで、これまた前回の記事で書いた通り、2016年にはLJL UNLOCKED、2017年にはLJL DRAFT QUIZという映像コンテンツがありました。

www.youtube.com


こういった、LJLを詳しく知らなくても(極端に言えば、LoLを全く知らなくても)楽しめるコンテンツを用意することがLJLに関心(興味)を持たせるのに必要なもののひとつです。

というわけで、ありきたりではありますが、既存のチームや選手に密着した動画を制作するのは非常に有力な一手となりえるのではないでしょうか。

その動画では、どの選手が何のチャンピオンが得意かなどといった情報は一切不要です。好きな食べ物や生活様式、そして人となりが分かるような動画こそが、LJLを全く知らない人間を誘引するんですから。

加えて、それなりのコストがかけられるのであれば、かつてEvi選手がRampage所属時代に密着取材を受け、BSジャパンで放送されたドキュメンタリーのような形式をとっても面白いでしょうね。

(2)(選手のストーリーも含め、)LoL以外に関心の軸をずらす

将棋業界が人口減少の歯止め・若年層の取り込みのために開催した将棋電王戦においては、「将棋そのもの」ではなく「人間 vs AI」を前面に押し出し、若者向けのプロモーションに成功しました。この方法をLJLでも採用するのはどうでしょうか。

例えばMSIやWCSといった世界大会。よくあるコンテンツではありますが、それだけ「国・地域の対抗戦」というのはLoLを知らない人を誘引する強力な武器の一つになりえます。

世界戦でLJLと因縁が深い相手として1チーム挙げるとすれば、オセアニア(OPL)のDire Wolvesがあります。残念ながら今Splitにおいてはプレイオフで敗れ、WCSへの出場は叶いませんでしたが、彼らは古くから頻繁にLJLへtrash talkを仕掛けてきました。

実力も十分にあり、LJL代表とは幾度となく世界大会で相まみえた実績がある等、ライバルと呼ぶに不足ない関係でしょう。

 



まだWCSで戦う可能性があるところで言えば、LECのMAD Lionsもそうでしょう。

昨年はSplyceというチーム名でWCSに出場していたMAD相手に、LJL代表のDFMは完勝と言える戦いぶりでLJLの対メジャーリージョン初勝利を挙げました。そういったところでも「日本 vs EU」という構図が作れそうです。

 


4.Action(行動):実際に観戦し、リピーターとなってもらうには

(1)有利・不利の可視化技術を有効活用する

前回の記事でも触れたとおり、LJLには既に有利・不利の可視化技術があります。それがiBlitzClank君。

最近は手首がちぎれそうなほど手の平を返すことで有名な彼ですが、現在は「ゲーム開始時、15分時点、20分時点等の節目のタイミングでしか表示されない」という弱点があります。

ゆえに、LJLの解説が分からない人には「今現在、どちらが有利なのか」が分からないのが現状です(解説で十分だろうという突っ込みには前回触れていますので、そちらを読んでください。簡単に言うと、LJLの解説はある程度LoLが分かっている人向けのものだという話です)

そこで、iBlitzClank君の常時表示をしてみるのはどうでしょうか。

リプレイ表示時等の例外を除き、原則的に常時表示とすることで、それこそ「ネクサスを割ったら勝ち」くらいの事しか知らない視聴者でも楽しめるコンテンツとしての土台が作りやすくなります。

現在のiBlitzClank君は(観客として見えている範囲では)少なくとも2分ごとにデータを取っているように見えます。その頻度を増やすことは、おそらくマシンパワーを増強するコスト程度での実現が可能で、割とすぐに適用できる施策ではないでしょうか。

(2)初めての視聴者が観戦しやすい土壌を作る

例えばTwitchにおけるチャット欄。

現在のTwitchチャット欄は、お世辞にも品の良いものではありません。

これを「統制」という形で治める(平たく言うとモデレーター権限でBANする)のではなく「文化」という形で昇華することで観戦しやすい土壌を作ることも、新規勢に観戦・リピーターとなってもらうには必要な作業と思います。

「それをTwitchのキッズたちに求めるのは……」という諦めは筋違いでしょう。実は実際に一部は出来ているんですから。

出前館のCMが流れれば「サンキューハマタ」とコメントを打ち、(少し古いですが)TFTモバイルのCMが流れれば「エイッwwwティーエフティーモバイルwwwドゥドゥドゥンジャwwwドゥロロロwwwゲレクシwwwドゥドゥドゥンジャエイッwwwティーエフティーモバイルwwwドゥドゥドゥンジャwwwドゥロロロwwwゲレクシwwwドゥドゥドゥンジャwww」と長文を繰り出すのは視聴者発祥の「文化」です。

これを公式側が作り出せるようになればいいのです。(正確に言えば、作り出せるような素材を提供できればいいのです)

但し、この「文化」を作るというのは非常にコスト(時間)がかかります(そういう意味では、アイデアとしてふさわしくないのかも)。

一朝一夕で作り上げられない(そして、公式側だけでは絶対に作り出せない。それをやると「統制」になってしまう)がゆえに、なるべく早く、そして持続的に実施していく必要があろうかと思います。

 

5.おわりに

今回は「仮に私が運営側の人間だったら」という仮定的な立場に立って、LJLの人口増加に寄与できるアイデアを考えてみました。

おそらくこのブログ記事が運営の方に読まれることは無いでしょう。だからといって、無意味な記事になったとは思っていません。

私の中で改めて「LJLが好きな人を増やすには」という考えを整理するとても良い機会になりましたし、更には今回整理した内容をいちプレイヤー、いち視聴者として応用することもできるからです。

応用方法としては、友人にLJLを紹介するときに「ゲームの内容」ではなく「選手の紹介」から入るのも良いでしょう。チャット欄で自らミームづくりに挑戦するのも悪くありません。

それぞれが「少し面白いこと」をできれば、今よりLJLが「少し面白くなる」かもしれませんから。

(文:あきのあまき)

*1:大昔に提唱されたモデルゆえに古風すぎ、AISASやSIPSモデルの方が適切という突っ込みもありそうですが、分かりやすさ重視です

【あきののろるにっき#27】隣の芝からLJLを考える(前編) ―将棋はいかにして「初見さんお断り」を乗り越えたか―

こんにちは、あきのです。

今回はちょっと真面目な記事。LJLの観戦において私が勝手に課題だと思っている点について、お隣さんのゲーム(将棋)がどうやってクリアした(あるいはしようとした)のかを考察しました。

 

 

1.私がLJLの課題だと思っていること

(1)LJL観戦は初見では楽しめない。

LJL観戦は敷居が高く、LoLの知識が乏しい状態の初見では楽しめません。それは「何が起こっているのかわからない」から。

より正確に言えば、「いまどちらが有利なのかが分からない」からです。

(2)そんなことない…?

そんなことないよ?という人もいるでしょう。例えば以下のような反論がすぐに思いつきます。

①グローバルゴールド差という分かりやすい指標がある?

確かにグローバルゴールド差は定量的な指標の一つです。しかし、必ずしも勝利に直結する指標というわけではありません。

有名な例外としては、オーンが挙げられますよね。グローバルゴールド差に反映されない有利をパッシブでチームにもたらすことができます。

 

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オーンのパッシブによる有利は金額換算しやすいが、だからといってグローバルゴールド差に反映されるわけではない。

また、そこまでミクロなところに焦点を当てなくても、互いのチーム構成によってグローバルゴールド差の評価に差が出るのは納得感のある話だと思います。

レイトゲーム志向であれば、ゲーム時間20分時点でイーブンなら実質有利。レベル16で凶悪なパワースパイクを迎えるカサディンにいくつかキルでも入っていれば、2000ゴールド程度ビハインドを背負っていたとしても万々歳かもしれません。

②実況・解説がいてくれる?

一面ではその通りです。

現在LJLを実況・解説してくださっている方々の説明は非常にわかりやすく、明快です。そこに疑問の余地はないでしょう。

一方で、実況解説はある程度LoLの知識がある視聴者に向けた内容となっています。*1

ガレンのEがぐるぐる回ることやファントムダンサーにシールド効果があることまでわざわざ解説しません。ゲーム内に話せる時間(リソース)は非常に限られていますし、視聴者の大部分が理解している事柄に何度も言及するのは全体的な視聴体験を損なうからです。

しかし、それがゆえに、知識が乏しい状態の初見では楽しめないのです。これは実況解説の巧拙ではなく、純粋に構造的な問題です。

③ゲーム内容だけがLJLの楽しみ方じゃない?

全くその通りだと思います。私も以前、「初めて観戦する人には、ゲームの内容よりも選手やチームの情報を楽しんでもらうのが先」という主旨を含んだ記事を書きました。

akinoamaki-lol.hatenablog.com

 

しかし、現在のLJLシーンは「選手やチームの情報を楽しんでもらう」ための情報提供が以前に比べて不足してきているように感じています。

例えば2016年。LJL UNLOCKEDという動画シリーズがあり、各チームのゲーミングハウスの内部や休日の選手の活動等にスポットライトを当てていました。

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若かりし頃(?)のEvi選手。
LJL UNLOCKED : THE FAMEより抜粋
https://www.youtube.com/watch?v=pRnjjr7iJfA&list=PLpOVkT2nygTs5rskM5wYyAEuvxzKtwPvl&index=4

 

例えば2017年。LJL DRAFT QUIZという動画シリーズがTwitterで公開されました。

この中では、バンピックの形式を借りながら各選手の好みやチームメイトの関係、裏話等が引き出されていました。

twitter.com

 

それ以降は? 単発の動画等はありましたが、LJLとしてプロシーンの選手・チームのひととなりに焦点を当てたストーリーの制作は無かったように記憶しています。

(3)LJLが提供し始めた解決の糸口。

「選手・チームのストーリー」については後述するので一旦置いておいて、まずは「いまどちらが有利なのかが分からないから観戦が面白くない」問題についてお話ししましょう。

この課題に対し、LJLは近頃解決策を導入しました。

それがAIのiBlitzcrank君です(正式名称は何なんだろう……?)。

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LJL公式放送より(https://www.twitch.tv/videos/699641638)


iBlitzcrank君は一定タイミングでの勝率予想を算出し、「今どちらが有利か」を可視化してくれます。

この「今どちらが有利かを可視化する技術」。これを有効活用することで、かつて人口減少の歯止めに成功したゲームがありました。

それが、今回メインでお話しする「将棋」です。

以降では、「隣の芝」である将棋業界における新規人口の取り込み事例を元にして、「LoLのプロシーン視聴人口を増加させるにはどのような施策が打てるのか」を考えてみたいと思います。

 

2.「初見さんお断り」の悩み。将棋は長らく同じ苦しみを味わってきた

(1)趣味の「おじさん化」

娯楽の多様性が増していく世の中で、伝統的な娯楽である将棋も長らく人口減少の歯止めに苦しんできました。中でも、若年層の人口は危険水域にありました。

少し古い資料ですが、公益財団法人 日本生産性本部が出している「レジャー白書2018」を紐解いてみましょう。

デビュー後29連勝を飾った藤井聡太七段(現・棋聖)というスターが登場した2017年にあってすら、将棋人口のうち、一般に中年と言われる40代以上の人口が2/3を占めていました。*2

www.jpc-net.jp

 

(2)将棋の観戦は基本的に「ヤムチャ視点」である

ところで、将棋というのは非常に難解なゲームです。実現可能な局面数はおよそ10の68乗ほどあると言われ、一般の素人では5手先を読むのもいっぱいいっぱい。一方、プロ棋士は(直線的な読みなら)数十手先まで読めるとも言われます。

ゆえに、プロ棋士が指した一手にどのような意味が含まれているのかを観戦者が理解するのは非常に困難。

つまり、「将棋のソロ視聴」はヤムチャ視点で戦いを眺めるだけの、基本的に楽しくない行為なのです。

 

(3)将棋業界の伝統的な対策と"新手"

将棋業界*3はこれに対して主に2つの解答を用意しました。1つは「解説者の配置」、そしてもう1つは「将棋の視聴に他の楽しみを用意する」という手段です。

一つ目の解説者の配置は分かりやすいですね。対局者と同等の力量を持つプロ棋士が、対局者が指した手の意味を初心者でも分かりやすいように説明してくれます。

二つ目には解説が必要でしょう。将棋というゲームはどれだけかみ砕いて解説してもやっぱり難解さが残り、話についていけなくなることがあるのです(そこが魅力でもあるのですが)。

そんな人でも将棋の「視聴」が楽しめる(いわゆる「観る将」になる)よう、将棋中継では色々な施策が試されています。例えば

  • 対局者が注文した昼食やおやつの紹介
  • 対局者に関するエピソードの開陳
  • プロ棋士の日常生活の公開

などなど。

「将棋」自体が楽しめなくても、将棋の「視聴」が楽しめる(将棋は指さず、主に観戦だけをする「観る将」になる)よう工夫がなされており、これで将棋人口が増えればハッピー、というわけです。(余談ですが、将棋というゲームはめちゃくちゃ長く(最長の棋戦では両者合わせて18時間の持ち時間がある)、単に対局者が指した手を解説するだけではとても場が持たないのを回避する意味もあります)

そして、将棋界がこの「将棋人口(「観る将」含む)の増加」と「若年層の取り込み」を意図して放った一大イベントが、「将棋電王戦」でした。

 

3.将棋電王戦とは

将棋電王戦とは、株式会社ドワンゴが主催した非公式の棋戦です。
一目見れば「休日にやってる将棋棋戦とは全然違う」と分かるPV動画がこちら。

www.nicovideo.jp

 

この棋戦の特徴を列挙すると以下の通り。

  • 将棋とは全く関係のない「人間 vs AI」を全面的にプロモーションに押し出した。(特にこの第二回は、人間をベビーフェイス(善玉)、AIをヒール(悪玉)にする等の手法を用いました。下の画像で前面に眼鏡を光らせているのが将棋AIの開発者さんです)

 

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上記動画より抜粋
  • 「将棋」よりも「将棋の視聴」=「プロ棋士が持つストーリー」に焦点を当てた。実際、各対戦において「あおりPV」が用意され、人間・AIのバックグラウンドが分かるように工夫されている。

www.nicovideo.jp

 

  • 局面の有利・不利を数値化して表示する将棋AIを常に画面に表示した。

 

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第三回将棋電王戦 豊島将之七段(現・竜王名人) vs YSSより(https://live.nicovideo.jp/watch/lv161974585
  • 全体的な演出を電子画面チックにし、従来の伝統性とは別の切り口を描いた。

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第二回将棋電王戦 塚田泰明九段 vs Puella αより(https://live.nicovideo.jp/watch/lv118757229



4.将棋電王戦のねらい

(1)将棋電王戦の特徴の整理

将棋電王戦は、前述の通り「将棋人口(「観る将」を含む)の増加」と「若年層の取り込み」を狙って開催されたものです。
その観点から見ると、前述の特徴は以下の狙いを持っていたように思われます。

  • 「プロ棋士が持つストーリー」に焦点を当てた

 →「観る将」の増加

  • 局面の有利・不利を数値化する将棋AIの常時表示

 →「観る将」の増加

  • 全体的な電子画面化→若年層の取り込み

 →若年層の取り込み


特に2つ目、「将棋AIの常時表示」は大きなパラダイムシフトでした。これが「観る将」の人口増加に一役買ったことは間違いないでしょう。

なにせ、将棋を全く知らない人でも、たとえ今解説が局面と別の事を話していたとしても、視聴を始めた瞬間に現状でどちらが有利なのかが分かるんですから。

「人間 vs AI」という将棋に全く関係ないプロモーションで流入してきた「初見勢」をキャッチするには十分すぎるほど敷居を低くできました。

(2)「カジュアル層」が入ってくることの受容

これは明確な論拠を示せるわけではないのですが、将棋業界は将棋電王戦を通して公に「カジュアルに将棋と付き合う層」の受容に舵を切ったように感じています。

「基本的に観るだけ。将棋はたまーに指す程度」で、「それまでは『先生』と呼ばれ尊敬されていたプロ棋士を『てんてー(藤井猛九段)』『みうみう(三浦弘行九段)』『将棋の強いおじさん(木村一基王位)』と呼び、『かわいいもの化』してしまう」カジュアル層の受容。その意思決定も、将棋人口減少に歯止めをかけた一手であったように思います。

(3)AIは解説者の地位を貶める?

ところで、一時この将棋AIには賛否がありました。

「ばっさりと局面を数値化してしまうこと、今後の展開をAIが予想することは、それまでその役割を担っていた解説者の地位を貶めることにならないか?」という指摘です。

結論から言えば、この指摘は全くの杞憂でした。

勿論、登場した当初こそ新たな仕組みの導入に困惑するプロ棋士もいましたが、すぐに業界の大部分が順応し、現在では地位を貶めるどころか、プロ棋士が解説をする上での助けとなる有用なツールとして活用されています。

また、そもそもプロ棋士の解説には独自の長所(対局者の背景エピソードを語ったり、ちょっとした将棋小噺をしてみたり等)があります。対局者が選んだおやつの意図を解説できるようなAIの開発にはあともう少し時間が必要である以上、今以上に解説者の地位が脅かされるという事態はしばらく来ないでしょう。

 

5.この記事のまとめ

ここまでの内容をまとめると以下の通りです。

  • LoLは初見で楽しめない。それは「何が起こっているのかわからない」「いまどちらが有利なのかが分からない」から。
  • 将棋も同じ苦しみを長らく味わってきた。特に人口減少の歯止め(新規人口の流入)と若年層の取り込みは喫緊の課題であった。
  • その課題解決に向け、将棋業界が放った起死回生の一手が将棋電王戦だった。
  • 将棋電王戦では徹底して将棋を「観る」ための工夫がなされ、特に局面の有利・不利の数値化し、常時表示することが大きなパラダイムシフトにつながった。
  • 加えて、将棋人口増加のために「カジュアル層」の増加を受け入れたことが、将棋人口減少に歯止めをかけた一手であった。

 

次回の後編では、この記事で紹介した将棋業界での施策を、なるべくコスト(費用・時間)を掛けずにLJLで応用・適用するアイデアとしてどのようなものがあるかを考えてみたいと思います。

 

(文:あきのあまき)

*1:以前にご本人が言及されていましたが、eyesさんはその番組の視聴者層を把握したうえで、話す内容やその濃淡等を調整しているそうです。聞いていても分かりますが、eyesさんとrevolさんは特に意識して話されていると感じますね。

*2:ただし、この統計には15歳未満が含まれていないことに注意。実際の比率はもう少し小さいでしょう

*3:正確には日本将棋連盟ですが、ここでは簡単のために「業界」と書きます。