【あきののろるにっき#34】「LJLは選手が変わり映えしないリーグなのか?」を検証してみた
こんにちは、あきのです。
昨日、OPL(オセアニア)リーグの閉鎖が発表されましたね。
An update about the future of the Oceanic Pro League (OPL) - https://t.co/JYPRWAg0Mt pic.twitter.com/5vfnksPRNe
— LoL Oceania (@LOL_Oceania) October 7, 2020
地域におけるesports振興の不振等から、今シーズンからRiotはオセアニア地域への補助金を削減し、チームへの支援金も減少。
更には選手への最低年俸保証も削除され、有望な選手が海外に流出する等、選手は勿論所属チームも憂き目に遭いました。
しかし、そんな逆境にも負けずリーグ代表として今年のWCSに出場したLegacy Esportsは、プレイイングループステージにおいてCBLOL(ブラジル)代表のINTZ、TCL(トルコ)代表のPapara SuperMassive、そしてLEC(ヨーロッパ)代表のMAD Lions相手に勝利。確かな爪痕を残し、去っていきました。
来シーズンからは、おそらくこのLegacy Esportsも、LJLの公式リーグ化の頃からLJLのチームとスクリムをしてくれていたChiefs Esports Clubも、国際戦でRampageとライバル関係を築いたDire Wolvesも、昨年のWCSで存在感を見せつけたMAMMOTHも見ることができないでしょう。
その事実が残念でなりません。
さて、翻って、LJLにおける選手の現状はどうでしょうか。
「平均年齢が高い」「同じ選手ばかりが出場しており、変わり映えしない」という声をよく耳にします。
もしこれらが事実ならリーグ全体が活性化が不足している可能性を示唆しており、喜ばしいことではないでしょう(勿論それらの事実が直ちにリーグ閉鎖に繋がるわけではないでしょうが)。
そんな背景から、今回はLJLの公式リーグ化(2016年)以降のロースター選手の年齢やチーム在籍履歴等の情報を用い、他リージョンの情報とも比較しながら、LJLにおけるプロ選手の新陳代謝(=どれほど新しい選手がリーグに流入してきているか)の程度を検証しました。
1.用いた資料(結論だけ知りたい人は飛ばしても可)
LJL(日本)、LCK(韓国)、LEC(ヨーロッパ)、VCS(ベトナム)、CBLOL(ブラジル)の5つのリージョンにおいて、2016年~2020年にスターターとしてロースター登録されている選手をピックアップ(5年間の合計213チーム、選手数1,065名)し、それぞれの選手について以下の情報を取得しました。
なお、LJLの比較対象としてLCK(韓国)、LEC(ヨーロッパ)、VCS(ベトナム)、CBLOL(ブラジル)を選定した理由は、メジャーリージョンにおいてフランチャイズ制を導入しているリーグ(LEC)としていないリーグ(LCK)、メジャーリージョンとマイナーリージョンの中間に位置するリーグ(ベトナム)、マイナーリージョンから1リーグのピックアップとすることで、全リーグを見渡さずともある程度世界的な状況が俯瞰しやすいと考えたためです。
これらの情報はLeaguepedia様(https://lol.gamepedia.com/League_of_Legends_Esports_Wiki)からいただきました。
【取得した情報】
- 2020年10月7日時点での年齢
- プロチームの在籍履歴
上記の情報を加工し、以下のデータを得ました。
【加工して得たデータ】
- 各シーズンにおける10月7日時点での年齢
- 昨シーズン以前に同一リージョン内でプロ活動を行ったことがあるか否か
2.分析結果
上記のデータをシーズン別・リージョン別に比較した結果がこちらです。
※データは2016年~2020年の5年分を取得していますが、2016年は2017年以降のデータの比較用として用いているため、グラフ上は2017年~2020年の4年分のみが表示されています。
縦軸に「リージョン内でロースター登録されている全スターター選手の平均年齢」、横軸に「リージョン内における新規登録選手数」を取っています。
後者についてはややこしいので詳説すると、
- 新人選手(2部リーグからの初昇格を含む) → 新規登録選手として扱う
- 昨シーズンまでに1度でも同じリージョン内でプロ活動を行った選手 → 新規登録選手として扱わない
- 他リージョンでのプロ活動実績はあるものの、当該リージョンには初参戦の選手 → 新規登録選手として扱う
というルールでカウントしています。
簡単に言うと「昨シーズンまでに当該リージョンの1部リーグで活動実績が無ければ、新人選手も助っ人ベテラン外国人も全て新規登録選手として扱う」ということです。
さて、改めてこのグラフを眺めると、意味合いとしてはおおよそ以下のものになると思います。
- グラフの左下(平均年齢が低く、新規登録選手も少ない) → プロ活動自体があまり活発でないリージョン
- グラフの右下(平均年齢が低いが、新規登録選手が多い) → 選手の新陳代謝が活発なリージョン
- グラフの左上(平均年齢が高く、新規登録選手が少ない) → 選手の新陳代謝があまり活発でないリージョン
- グラフの右上(平均年齢が高く、新規登録選手も多い) → 選手の流動性は高いものの、新規加入した選手の年齢自体も高めなリージョン(他リージョンで実績を積んだ助っ人外国人が流れてくるリージョン等)
※※※免責※※※
本グラフに用いているデータは、主に以下の理由で正確でない可能性があります。
- 各年の10月7日時点での年齢を平均年齢の算出に用いている(つまり、記載されている平均年齢はおおよその目安である)
- 同じロールに複数人の登録選手がいる場合、任意の1人を選択している
- Leaguepediaに年齢の記載が無い選手を除外している
- Spring Splitのデータのみを収集し、Summer Splitのロースター変更を考慮していない
- フランチャイズ制の採用の有無による差の調整を行っていない(フランチャイズ制を採用せず昇格戦があるリージョンの場合昇格チームが発生するとチームごとロースターが入れ替わることから、新規登録選手数は上昇する傾向があると思われる)
また、結局は5リージョンだけの分析です。他の地域を見れば、また別の視点が出てくるかもしれません。
3.結果のまとめ
サンプルとしたリーグ数が少ないため断定はできませんが、全般的に見て、メジャーリージョンは新規登録選手数が少なく、一方でマイナーリージョンは多い結果が見られました。
これは、マイナーリージョンは海外から実績を積んだベテラン外国人選手を招集する事がある事実や、選手市場が成熟しきっていないこと等が要因と考えられます。
加えて、グラフ上の位置関係から各リージョンの比較を行うと、おおよそ以下の推測が成り立ちます。
①LJL(日本)
リーグ全体の成熟傾向やフランチャイズ制の導入により落ち着いていく傾向があるものの、依然として選手の流動性(=新規登録選手数)は比較的大きい。
一方で、5リージョンの中で最も4年間での平均年齢の上昇幅が大きい(+1.2歳)ことから、新規加入した選手の年齢も高め(助っ人外国人含む)であることがうかがえる。
②CBLOL(ブラジル)
選手の流動性は非常に大きい。
一方で、LJLと同じく平均年齢の上昇幅は近年大きめ(4年間で+0.9歳)なことから、LJLと同じ悩みを抱えていると思われる。
③LCK(韓国)
選手の流動性は年によってまばらである。
LCKの特異性としてリーグ内のロースターのほとんどを自国リージョン内の選手で賄っている背景から、新規登録選手数=新たな新人選手の台頭数と考えると、国内における新陳代謝はそれなりに活発でことがうかがえる。
④LEC(ヨーロッパ)
LCKより若干平均年齢が高めで推移するも、2020年はやや抑えられ、平均年齢の上昇に歯止めをかけた。
新規登録選手数が比較的少ないのは、リーグの成熟と2019年からのフランチャイズ制導入等が要因と思われる。
非常に異質なリーグで、選手の流動性が大きく、一方で平均年齢は非常に低い。また、4年間での平均年齢の上昇幅も最も小さい(+0.2歳)。
リーグ内における選手の流動性(新陳代謝)が非常に活発な様子がうかがえる。
4.LJLは「選手が変わり映えしない」リーグなのか?に対する答え
以上の考察から、LJLは「選手が変わり映えしない」リーグなのか?という問いに対する答えは「否」となるでしょう。
但し、世界的に見ても選手の年齢層が高めであることは事実で、これは「若手の有望な選手の流入が少ない」ことを示唆しています。
この状況を捨て置いた場合、選手間の競争環境の喪失による実力向上の機会損失やベテラン選手引退時におけるリーグ全体の実力低下など、選手層の硬直化に伴う弊害が発生するおそれがあります。
この状況の解決策として、近頃何かと話題になっている日本サーバチャレンジャー帯における競争環境の向上等、これまでに引き続きRiot Games Japanが継続して対策を打ち続けていってくれることを願っています。
(文:あきのあまき)